ひと夏の思い出に恋をして(女性ver)


≪詳細≫

とある企画に参加して書いたお話。

およそ5分くらいになります。

※画像:ミカスケ様、フリー素材の組み合わせ


≪関連作品≫

ひと夏の思い出に恋をして(男性ver)

ひと夏の思い出に恋をして(2人読みver)


≪あらすじ≫

とある夏の日、海に入っていたら、突然声を掛けられた。

『死んではだめだ』


≪登場人物≫

女性:とある男性と出会った思い出を夢に見る人。



海、花火大会、夜の二人だけの秘密。


私が毎晩、夢に見る光景。

それは私の大好きなあの人とのひと夏の思い出。


初めて出会ったのは海だった。

何となく朝焼けを見たくなって、近くの海に足を運んだ。


あんな時間、誰もいないと思っていた。

だけど、少し波打ち際で海に入っていたら、あなたに声を掛けられた。


『死んではダメだ』


最初は何を言われているのか分からなかった。

でも、あなたが私の手を取って、必死に止めているから

勘違いさせていることに気が付いた。


「死のうとしてませんから、安心してください」


私がそう返事をすると、あなたはさっきまでの必死さが消え、慌て始めた。 

その表情が面白くて思わず笑ってしまった。


それから、たまに海で会うようになった。

というより、私が本当は死のうとしていると疑ったあなたが

探しに来てくれていたのだけれど。


本当に優しい人だなぁ。


そう思っているうちに、夢の場面が変わる


出会って何度か話していると、花火大会の話になった。

毎年、海の近くで花火大会をしていて、見に行っていると話すと

あなたから誘ってくれた。


『僕と一緒に行きませんか?』


家族としか行ったことがなかったから、誘われて嬉しかった。

嬉しすぎて浴衣を新調までしてしまったのは、今でも内緒。


当日、わざわざ穴場になるような所を案内してくれた。

出会った時からずっと、気にかけてくれるこの人に何か出来ないかと

花火を見ながら、隣で浴衣姿のあなたに見惚れながらそんなことを思った。


夜空に次々に咲く色とりどりの花火。

時折、照らし出されるあなたの横顔を眺めていると、不意に言われた。


『浴衣姿、素敵ですね』


言うのを忘れていたと、前置きをするあなたは少し照れくさそうにしていて

なんだが可愛いと思った。

きっと、私はこの時、あなたに恋をした。 


また、夢の場面が変わる。


今度は別れ際の切ない思い出。

ある時、あなたに呼ばれて夜のアトリエに行った。

あなたがお茶の用意をしてくれている間に部屋を少し見渡すと机に本が1冊置かれていた。

そこには栞が挟まっていて、読みかけなのが分かる。

気になって手に取ろうとしたところで、あなたが戻ってきた。


そして、私が気になった本の話をしてくれた。


『これは本じゃなくて、日記なんだ』と。


それを聞いた時に、手に取らなくてよかったと思った。

さすがに人のプライベートなことを見ることは出来ないから。


でも、今はあの時に読んでおきたかったと思う。

そうすれば、こんな別れにはならなかったかもしれない。


だって、この本は、あなたの記憶の物語なのだから。



(終わり)

0コメント

  • 1000 / 1000

chao's book

chaoのシナリオを投稿しております。 一人読み・二人読みがメインとなっており、ジャンルは主にラブストーリー系、日常系となっております。 また、使用に関しましては別途ご確認ください。