春夏秋冬(秋)


≪詳細≫ 

 このシナリオは1人読みのシリーズものです。 

およそ10分ほどとなっております。

前編は『』 続編は『


 ≪あらすじ≫ 

 季節ごとに四季を知らない旅人が巡りいろいろなことを知っていくお話。 

 『季節は巡る』

 新たな気づきがあるかもしれません。


≪登場人物≫

旅人:四季を知らずに、四季の国へと迷い込む者。

配役のない文章も読んでください。

※配役のない文章は、ナレーション風に読むことを推奨します。


<秋>


これはとある、四季を知らない人が四季を巡る物語。


旅人:この世界に来て、かなりの時間が経った。

旅人:未だにどうしてここに来たのかは分からない。 

旅人:しかし、そんなことが気にならないくらい、春、夏と過ごす中で、色々なことを知った。

旅人:人の温かさ、木々や花、動物たちの成長。

旅人:来てよかったと思えることが本当に多い。


旅人はそんなことを思いながら、旅を続けていた。


旅人:夏から秋に変わる頃なのだろうか。

旅人:少しだけ、暑さが和(やわ)らいで肌寒い感じがする。

旅人:それに、辺りの木々が、少しずつだが、綺麗に色づいてきている。

旅人:きっと、これも秋に変わる特徴だ。


そんなことを考えていた時

道の途中にある家の前で、何やら作業をしている人が居ることに、旅人は気づいた。

気になった旅人は、「何をしているのだ?」と声を掛けた。

すると、作業に夢中だったのか

旅人が声を掛けるまで気づいていなかったようで、かなり驚いていた。

旅人は少し申し訳ないと思いながら、もう一度「何をしているのだ?」と聞いた。

すると相手は、気にしない素振りで答えた。

「落ち葉を集めているんだ」と。


旅人:言われて足元を見ると、確かに色づいた葉がたくさん落ちている。

旅人:しかし、なぜ、落ち葉を集めているんだ?何かに使うのだろうか?


旅人が不思議な顔をしていると、相手は言った。

「落ち葉をこのままにしていると、歩きづらいし邪魔だろう?」

「だから、こうして集めて、庭で焚き火でもして温まろうと思ったんだ」と。


 旅人:焚き火?見たことも、聞いたこともないものだ。

 旅人:興味があり、目の前の人に見せて欲しいと言ってみた。


相手は 「なら、そのかごを持って付いて来い」

明るくそう言って、旅人を促した。

旅人は言われるがまま、かごいっぱいに集められた落ち葉を持って、後をついて行く

前日の雨で、水を含んでいるせいか少し重い、と思った。


旅人:歩きながら、前を行くその人に聞いた。

旅人:「しかし、こんなに集めて、使い切れるのか?」と。

旅人:焚き火が何か分からないが、かごいっぱいだったこともあり、集められた落ち葉がすごく多いと感じたからだ。


旅人の疑問に相手は「おかしな事を聞くなぁ」と言いながら答えた。

「問題ない。焚き火は落ち葉を燃やすものだから」と。

それを聞いた旅人は、焚き火とはそういうものなのか。早く見てみたいと思った。


旅人:そんなことを考えていると、その人の家の庭に着いた。

旅人:そして「かごの中の落ち葉をここへ」と言われた。

旅人:言われるがままに、落ち葉をかごから別の入れ物に移しながら、何故移すのかと思った。

旅人:それに、この落ち葉を移している入れ物はなんだ?と疑問が次から次へと出てきて困った。

旅人:こんなに一気に質問しては困らせてしまうと思ったからだ。


旅人はこの世界に来て、色々な人と出会い、たくさんの心遣いを学んだ。

だからこそ、どこから聞いたらいいのか困っていた。

今までは、相手が気付いてくれていたから、旅人は質問しやすかったのだ。

どうするべきかと思っていると、相手が言った。

「何か聞きたいなら、遠慮せずに聞けばいい。」と。


旅人:この世界の人は、本当に優しい。

旅人:旅の途中で様々な人に出会って来たが、邪険にされたことは一度もない。

旅人:そんなことを思いながら、その人の言葉に甘え、まず移している入れ物は何かと尋ねた。

旅人:するとその人は、「この箱かい?これはドラム缶だよ。」

旅人:「これに落ち葉を入れて、少量の枝に火を付けて一緒に入れれば焚き火の完成さ。」と言った。


「なるほど。この箱も焚き火には欠かせないのか」旅人は思った。

相手は、旅人が聞きたいことが分かっていたかのように続けた。

「まぁ、箱に入れなくても出来るんだが…」と言葉を濁した。

旅人が、どうしたのかと聞いたら、少し困ったような顔をしながら言った。

「地面が汚れるし、濡れた落ち葉でそこまで燃え上がることはないとはいえ、舞い上がったら大変だからな」

そう言いながら、相手は小枝を集め、火の準備をしていた。

「焚き火とは燃え上がるようなものなのか?」と旅人は尋ねた。

相手は一言。

「あぁ、火をつけすぎるとな。」と言った。


 旅人:その人は、だから濡れた落ち葉は多いほうが良いと教えてくれた。

旅人:しかし、焚き火は火を使うものなのだから、燃えたほうがよいのでは?

旅人:それを聞いて

旅人:「でも、それじゃあ風情(ふぜい)がないだろう?」とその人は言った。

旅人:風情…それは、この国ならではのものだと

旅人:いつだったか出会った人が教えてくれたのを思い出した。


旅人は、ここに来るまでに色々な人からその言葉を聞いた。

この世界の人々は、風情を大切にしているのだろう。

旅人自身もそれは気に入っている。


旅人:そんなことを考えている間に、その人は小枝をいくつか箱の中に入れて火をつけた。

旅人:落ち葉が濡れていることもあり、心配していた燃え上がりは起きなかった。

旅人:「これが焚き火か。確かに、ちょうどよい火加減で、近くに居ると暖まる」

旅人:秋は肌寒くて少し苦手だと思っていたが、こんな風(ふう)に暖まれるなら悪くないと思った。 


旅人はしばらく、焚き火を見つめながら、そんなことを思っていた。

そして、秋より寒いという冬とは、どんな季節なのかと楽しみになった。 


旅人:さぁ、旅を続けよう。次に来る最後の季節、冬を想像しながら。


(冬へ)

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