春夏秋冬(夏)


≪詳細≫

 このシナリオは1人読みのシリーズものです。

およそ5~10分ほどとなっております。

前編は『』 続編は『

 

≪あらすじ≫

 季節ごとに四季を知らない旅人が巡りいろいろなことを知っていくお話。 

 『季節は巡る』

 新たな気づきがあるかもしれません。


≪登場人物≫

旅人:四季を知らずに、四季の国へと迷い込む者。

配役のない文章も読んでください。

※配役のない文章は、ナレーション風に読むことを推奨します。


<夏>


これはとある、四季を知らない人が四季を巡る旅の物語。


旅人:この『四季の国』というところに来て、どのくらいが経っただろう。

旅人:春の季節は本当に過ごしやすい季節だった。

旅人:そして、気づけば、桜の花が散り、葉が生い茂っていて、蒸し暑い感覚。

旅人:「あぁ、これが夏なのか。」


旅人は、最初に出会った人の言葉を思い出しながら、実感していた。


旅人:何よりもここは、自分がいた真っ暗な世界と違い、すべてが輝いて見える。

旅人:人も動物も、植物も風も水も、すべてが新鮮で美しい。

旅人:この先にある四季は、どんなものを見せてくれるのかとわくわくする。


旅人は、自分のいた世界と季節というものを比べながら、そんなことを思っていた。


旅人:「しかし、暑いと聞いていたが、想像以上だ」 

旅人:自分のいた世界は、気候が安定していたからこの感覚は初めてだ。 

旅人:この国の人々は、どうやって過ごしているのだろう。


そんなことを考えていると、後ろから声を掛けられた。

旅人は、驚きながら振り返る。

すると一人の人が立っていて、心配そうに旅人を見ている。


旅人:声を掛けてくれた人に聞いてみた。

旅人:「ここに来るのが初めてで、どのように暑さをしのげばいいか分からないのだ」と。

旅人:それを聞いた相手は、少し驚きつつ 

旅人:「日陰に入るのがいいですよ」と教えてくれた。

旅人:そして、水を飲んだり、浴びたりするのも良いと。

旅人:「水を浴びる?」


旅人の疑問に、優しく

「そうです。汗をかいているでしょう?それを流すのは気持ち良いものです。」と相手は答えた。 

そして、旅人を近くの川辺へ連れて行った。

そこには大量の水があり、空気が少しだけひんやりしていると旅人は思った。


旅人:川辺を眺めているのを見て、その人は優しく微笑みながら言った。

旅人:「ここは少し木々が多くて他より涼しいし

旅人: あまり人も来ないから、のんびり足を水につけて休むといい」

旅人:「さすがに、水浴びは出来ないけれど」と言い、いつの間にか用意していた布を

旅人:「座る時に敷いて」と手渡してきた。


旅人は相手の優しさに甘え 

「じゃあ少しだけ」と、川辺に足を入れた。

そして、思っていたよりひんやりとしていて驚いた。


旅人:「これは確かに気持ちがいい」

旅人:受け取っていた布を敷き、そこに腰を下ろした。


旅人が布を敷いたのを見て、相手はもう一枚持っていた布を、川辺の水につけた。

そして、濡れた布を絞り、旅人に手渡しながら言った。

「足を水につけたまま、この布で顔や体の汗を拭くともう少し涼しくなると思う。

あとは首から下げるのもよい」と。 


旅人:言われるがままに、涼しくなる方法を一つ一つ試していく。

旅人:確かに、どれも涼しく感じる。この世界の人は知恵が豊富だ。 

旅人:いくつかの中から 旅人:「首から下げるのが一番涼しいと感じる」とその人に伝える。

旅人:すると、やはりという顔でこちらを見る。

旅人:どうしたのかと尋ねると、その人は 

旅人:「首元を冷やすのが熱を逃がすのにいい」と教えてくれた。

旅人:ただ、人によって違うから色々伝えてくれたようだ。


旅人は相手の心遣いに驚いた。

自分は何も知らないのだから、自身が良いと思っている一つだけを、教えてもよかったのに、と。 

少し不思議に思っていることに気付いたのだろう。

その人は、旅人に言った。

「個性は大切にしないと」


旅人:「個性?それはなんだ?」 

旅人:真っ暗な世界にいた自分には分からない。 

旅人:この世界は知らないことがたくさんだ。

旅人:秋や冬を過ごせば、もっと知れるだろうか。


旅人は、そんなことを思いながら相手に聞いた。

「個性というのは、どういうものなのか」と。

すると、相手は和か(にこやか)に 

「個性は、人それぞれの良い所」

「それは人だけじゃなくて、生き物や草木もだけれど」と答えた。


旅人:なるほど。春に出会った人も、この人も。 

旅人:今まで見てきたものは、確かに一人一人、一つ一つ違う。

旅人:それが個性か。だから、次はどんな人に出会えるのかとわくわくしていたのか。

旅人:そんなことを思いながら、十分に休めたと伝え、相手に布を手渡し、旅立つ準備をした。

旅人:これから来る秋を想像しながら。


(秋へ)

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