大切な人がいる幸せ
≪詳細≫
大切に思っていた人との別れを乗り越える時、どんなことがきっかけになるかなと思って書いたお話。
およそ10分くらいだと思います。
≪あらすじ≫
たまたま出会った2人。
傷を抱えた女性と寄り添う男性…
≪登場人物≫
女性:大切だと思っていた人との別れで傷心していた人
男性:偶然見つけた女性に心配して声を掛けた人
【本編】
女性:私は、あなたの手を取ったことを後悔しない。
男性:俺は、お前に手を取ったことを後悔させない。
女性:それは突然の出来事だった。
女性:ずっと一緒だと、話していたのに。
女性:どうすることも出来ないと分かった時、思っているより気丈に振る舞う自分に可笑しくなった。
女性:「何しているんだろう、私」
男性:「どうしたんですか?」
女性:「え?」
女性:突然、声を掛けられ、振り向くと、人当たりの良さそうな男性がいた。
男性:「すみません。今にも飛び込みそうな顔をしていたので…」
女性:「え?……ごめんなさい。ちょっと考え込んでしまって」
男性:「俺でよければ、話を聞きますよ?」
女性:見ず知らずの人に声を掛けるだけでもすごいと思うが
女性:相談まで乗ろうというこの人は、お人好しなのか、実は危ない人なのか…
女性:そんなことを考えていると、不審がっているのが顔に出てしまっていたのか、急に慌て出した。
男性:「すみません、急に見ず知らずの男にこんなこと言われても、困りますよね」
女性:「あ、いえ。…とても親切な人なんだなぁと思って」
女性:嘘は言っていない。慌てぶりを見て、本当にそう思った。
男性:「親切…か、どうかは、分からないですけど。
男性: あなたのことが気になったのは、間違いないですね」
女性:「飛び降りそうだったから?」
男性:「それもあるんですけど…何となく、惹かれたというか」
女性:「そうなんですか?」
男性:「はい。憂いているような表情と背景がマッチして綺麗だったというか」
女性:「…だとしたら、私の心情とここの雰囲気がマッチしていたんでしょうね」
女性:だからこの場所を選んだ、というわけではないのだけれど。
女性:この景色は、気持ちが沈んだ時によく見に来ていた場所だったから、自然と馴染んだのかもしれない。
男性:「すみません、余計なこと言いましたか?」
女性:「いいえ。おかげで少し気持ちが晴れました」
男性:「そうなんですか?」
女性:「はい、ありがとうございます」
男性:「お役に立てたなら、良かったです」
女性:世の中には、色んな人が居る。
女性:突然居なくなる人も居れば、手を差し伸べる人もいる。
女性:きっと、私は運がいい。
女性:こんな素敵な人に出会えたのだから。
男性:普段、声を掛けることはしない。
男性:でも、たまたま見かけた彼女は、本当に写真や絵にしたいくらい
男性:その場所と雰囲気に合っていて、思わず声を掛けていた。
男性:そのあと、彼女がお礼にとコーヒーをおごってくれた。
男性:そして、しばらくして…
(少し間をあけて)
男性:「まさか、付き合えるとは」
女性:「ん?どうしたの?」
男性:「いや、あの出会いからまだそんなに経ってないけど、
男性: こうして付き合えることになるなんて、驚きだなぁと思ってな」
女性:「それ、ずっと言ってるけど、そんなに意外だったの?」
男性:「だって、本当に今すぐにでも飛び降りそう!って感じだったんだぞ?」
女性:「実際は、飛び降りる気なんて、全然なかったけどね」
男性:「それを聞いた時は、ちょっと恥ずかしくなったけどな」
女性:「でも、そのお陰で、今、こうして一緒に居られる。私は、感謝してるよ」
男性:「それならいいけど…そういえば」
女性:「ん?」
男性:「ずっと聞こうと思ってたんだけど」
女性:「うん」
男性:「どうして、あんなところに居たんだ?」
女性:「今更聞くの?それ」
男性:「あの時は、聞いていいのか、分からなかったんだ。でも、ずっと気になってた」
女性:「…あまりいい気はしないと思うけど」
男性:「それでも。お前のことをもっと知りたいから」
女性:「…あの時は、お互いに大切だと思っていた人が、突然姿を消して…
女性: どうしていいか分からなくなってたの」
男性:「お互いに思ってたのに?」
女性:「実際は、私だけだったんだと思う。だからこそ、どうしていいのか分からなかった。
女性: あの場所は、元々、私が悩みを抱えた時によく行く場所だったってだけ」
男性:「なるほど…あ、だからか」
女性:「ん?」
男性:「一緒に居る時、なかなかくっつかないと思ったら、くっついた後は、離れたがらないだろ?」
女性:「うん」
男性:「最初は、ただ照れていて、でも、くっつくのが好きなんだなぁって
男性: 思ってただけなんだけど…今ので納得した」
女性:「納得?」
男性:「そう。なかなかくっつかないのも、離れたがらないのも
男性: 俺が急に居なくなるかもしれないっていう恐怖心からだろ?」
女性:「…!」
男性:「大丈夫。きっと、俺の方が、お前に惹かれているし、離したくないって思ってる」
女性:「本当に?」
男性:「あぁ。だから、これからも隣に居てほしい。隣に居てくれるだけで、頑張れるから」
女性:「…ほんと、ズルいよね」
男性:「ん?」
女性:「年上の人の余裕は、ズルいなぁって」
男性:「年の功もたまには、役に立つってことだな」
女性:「そこまで離れていないはずなんだけどなぁ」
男性:「まぁまぁ…で、返事は?」
女性:「…離さないでくれるなら、私は隣に居るよ。大好きだもん」
男性:「よかった。俺もお前のことが大好きだ」
女性:これからも、あなたの隣に居られるように、言葉にして伝えていこう。
男性:これからも、この幸せが続くように、言葉にして伝えていこう。
(おわり)
0コメント