想いは時を越えて~景太×美桜~


【詳細】

 『想いは時を越えて』シリーズの現代編。

  およそ、10分ほどになります。


【関連作品】※掲載順、シナリオ早見表にリンク有

『平安~現代』※男2:女2

『寿楽×紅羽』※男1:女1

『寿楽×千景』 ※男2:女0

『千景×紫桜』 ※男1:女1

『紅羽×紫桜』 ※男0:女2

『寿里弥×紅葉』※男1:女1

『千景と紫桜の最期』※男2:女2、一部兼役あり

『現代編』※男2:女2

『寿里弥×美桜』 ※男1:女1

『紅葉×景太』 ※男1:女1


【あらすじ】

 平安時代の記憶を持ち、紫桜の生まれ変わりを探す景太と、記憶を持たないが景太に惹かれる美桜。

 互いを大切だと思う理由とは…


【登場人物】

 土御門景太(つちみかど けいた):男性

  千景の生まれ変わり。代々陰陽師の家系の土御門家のご子息。

  前世の記憶を持っているため、紫桜の生まれ変わりを探していた。

  紅葉の紹介で知り合った美桜に惹かれている。

 

 藤宮美桜(ふじみや みお):女性

  紫桜の生まれ変わり、本人はその自覚がない。

  『視えるだけ』で術は何も扱えない。

  寿里弥の紹介で知り合った景太に惹かれている。




景太:信じたいから、僕たちは追い求める。

美桜:ようやく分かった。出会いを、互いを求める理由を。


景太:「あなたには『視る力』があって、僕には『守る力』がある。どちらも無くてはならないものだと思います」

美桜:「そうですね。あの…」

景太:「はい」

美桜:「また、会ってくれますか?」

景太:「え?」

美桜:「もっと、いろんなお話をしてみたいです」

景太:「…僕もです」


景太:この日を境に、僕は美桜(みお)さんに会うことが増えた。

景太:会えば会うほど、紫桜(しお)に似ていると実感した。

景太:だけど、それだけじゃない。



【場面転換】

― 喫茶店 ―



美桜:「ごめんなさい!お待たせしました」

景太:「いえ、僕も今来たところなので」

美桜:「…本当は、もっと前から居ましたよね?」

景太:「え?どうしてそう思うんですか?」

美桜:「景太さんの傍に、小鬼が居て」

景太:「あっ!こいつは、姉さんのお気に入りで…その…」

美桜:「ふふっ」

景太:「美桜さん?」

美桜:「ごめんなさい。まさか、そんなに慌てると思わなくて(笑いをこらえるように)」

景太:「・・・」

美桜:「前にも言いましたけど、私は『視えるだけ』なので、傍に居ることしかわからないです」

景太:「あぁ…そうでした(頭を抱えるような)」

美桜:「ふふっ(笑)本当は寿里弥(じゅりや)から待ち合わせより早めに来るようにしているはずだと、言われていたので、そうかなぁと思っただけです」

景太:「そうなんですね」

美桜:「でも、まさか、小鬼が私に話したと思うとは、思いませんでした」

景太:「…こいつ、結構、僕の傍にいるんですけど、よく姉さんに色々話しているみたいだったので」

美桜:「なるほど。紅葉(もみじ)さんに対する反応と同じようにしてしまったんですね」

景太:「うぅ…絶対、姉さんの耳に入るなぁ」

美桜:「本当に、仲がいいですよね。お二人」

景太:「まぁ、たった二人の家族ですからね」

美桜:「そうですけど…でも、羨ましいです」

景太:「そうですか?」

美桜:「えぇ。私は一人っ子なので。まぁ、寿里弥が居たので、あまり寂しいと思うことはなかったですが」

景太:「寿里弥さんがお兄さん代わりですか?」

美桜:「そう、ですね。本当に、ずっと一緒でしたから」

景太:「でも、そのお陰で、僕は美桜さんに会えました」

美桜:「そっか…なら、そこは、寿里弥に感謝しないといけないかもしれません」


美桜:私には、寿里弥しかいないと思っていた。

美桜:『視える』ことをずっと嫌っていた私に、居場所をくれたから。

美桜:そして、この人も…


美桜:「私は、景太さんにも感謝しているんですよ?」

景太:「え?」

美桜:「私、寿里弥には視えることに関しては、あまり伝えていないんです」

景太:「そうなんですか?」

美桜:「景太さんは、何となく知っているみたいですけど、私は視え方が少し特殊で…そのせいで、力の強い妖にも狙われることが多いんですけど」

景太:「初めて会った時も、そうでしたね」

美桜:「はい。でも、その理由を伝えたら…寿里弥は、もっと無茶をすると思ったんです」

景太:「なるほど…」

美桜:「だけど、不思議と景太さんには、言っても大丈夫だと思ったんです」

景太:「そうなんですか?」

美桜:「はい。理由は分からないですけどね(苦笑)」

景太:「力のある人の直感は、大切ですよ」

美桜:「私は、視ることしか出来ないのに、ですか?」

景太:「力の種類は関係ありません。力そのものを持つかどうか、なんです」

美桜:「そういうものですか?」

景太:「まぁ、これは、姉さんからの受け売りなんですけど」

美桜:「紅葉さんの?」

景太:「はい。ご存じの通り、僕の家は、代々陰陽師の家系です。その中でも姉さんは、ずば抜けている。

景太: だからこそ、昔の僕は、すごく焦っていたんです」

美桜:「焦る?」

景太:「次に力の強いと言われていた僕は、攻撃には不向きだったので」

美桜:「・・・」

景太:「もし、姉さんに何かあったら、僕は守る事は出来ないって思っていたんですけど、その時に言われたんです。

景太:『あなたには術を使える力がある。それでいいじゃない。力そのものを持つかどうかが、最初のスタートラインで、種類なんて関係ないのだから』って」

美桜:それって、つまり、結界術が得意な景太さんは、それを生かせれば問題ないってことですよね?」

景太:「そうです。守るために必要な力は攻撃だけじゃないって、その時に気付きました」

美桜:「なるほど…なんか、分かる気がします」

景太:「え?」

美桜:「これも、何となく…ですけどね」

景太:「その気持ち、大切に持っていてくださいね」

美桜:「ふふっ」

景太:「美桜さん?」

美桜:「ごめんなさい。あの時、紅葉さんにも同じことを言われたなぁと思って」

景太:「あ…確かに」

美桜:「やっぱり、お二人は凄いですね」


景太:姉さんと同じ言葉を口にしていたことに、まったく気付かなかった。

景太:だけど、紫桜の生まれ変わりかもしれないと思ったら、伝えずには、いられなかった。

景太:僕の『守る力』は、過去の彼女との記憶から、意識するようになったものだったから。



【場面転換】



千景:「紫桜!!」

紫桜:「ち…かげ…」

千景:「何で…」

紫桜:「分からない…でも、私…初めて、守れた…」

千景:「紫桜…ダメだ…死なせない」

紫桜:「千景…」

千景:「紫桜…お前を守るためにいるのに…俺は…」

紫桜:「千景…あり、がとう…」

千景:「え…?」

紫桜:「私は…あなたの、傍で…腕の中で…しあ…わ…せ」

千景:「紫桜?…紫桜!…っ!」


千景:紫桜を守れなかったという絶望から、ただ抱きしめて、名前を叫ぶことしか出来なくなっていた。

千景:男鬼に刺された後、後悔だけが押し寄せてきて、もし、未来でまた出会うことが出来るなら、今度は、平和な世界でずっと一緒に居たいと願いながら、俺は目を閉じ、意識を手放した。



【場面転換】



美桜:「景太さん?」

景太:「え…今のは」

美桜:「景太さん、大丈夫ですか?」

景太:「あ、はい」

美桜:「急に黙っちゃうし、意識ないのかと思って、心配しましたよ」

景太:「…すみません。なんか、急にぼーっとしてしまったみたいで」

美桜:「具合悪いんですか?」

景太:「いえ…ちょっと、昔見ていた夢を思い出していたみたいで」

美桜:「昔の夢、ですか?」

景太:「はい。僕にとって、すごく大切な思い出でもあるんです。急に思い出すのは珍しいんですけど」

美桜:「そうなんですね。でも、何もなくてよかったです」

景太:「ありがとうございます」



【場面転換】



景太:あれから数年が経ち、美桜と付き合うようになった。

景太:なんで、あの時、急に意識を飛ばすようなことになったのかは、未だに分からない。

景太:でも、きっと、美桜と出会い、何かの力が働き、見せてくれたのだろう。

景太:美桜と一緒に、これから先を歩んでいけるように、と。


美桜:景太と付き合うようになって、少しずつ力の使い方を覚えてきた。

美桜:それでも、まだまだ、この目を欲しいと目の前に妖が出てくることがある。

美桜:景太がくれるお守りの効果は絶大で、ケガをするようなことはない。

美桜:何となく、懐かしいような、嬉しい気持ちになりながら、隣を歩いている。


景太:「美桜は、運命って信じる?」

美桜:「急にどうしたの?」

景太:「…前に話したことがあるでしょ?僕には前世の記憶が少しだけあるって」

美桜:「うん。だから、私たちは出会えたって言ってたね」

景太:「うん…美桜はどう思ってるのかな、と思って」

美桜:「う~ん。前世とかは分からないけど、景太と出会ったのは運命だと思う」

景太:「・・・」

美桜:「初めて会った時に、初めてじゃないっていうのは感じたし。あ、でも、だから好きになったわけじゃないからね」

景太:「美桜…」

美桜:「きっと、前世でも景太のことを好きだったんだと思うけど、私は景太だから、好きになったんだよ」

景太:「うん…僕も、美桜だから好きになった。ごめん、変なこと聞いて」

美桜:「ううん。嬉しいよ」

景太:「え?」

美桜:「だって、ちゃんと想い合うって大切じゃない」

景太:「そうだね」



景太:追い求めた先に、未来は繋がっている。

美桜:だから、何度でも想いは時を越えて、繋がっていく。



(おわり)


SpecialThanks:くろろこ様

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