想い出の桜は遠く


【詳細】

 2024年でライターとして3年が経ち、久しぶりにバレンタインに合わせた個人企画を。

 ある10個のタイトルの詩の中から選んで頂いたもので、お話を作成しています。

 今回の詩のタイトル【遠い】

 推奨BGM:冬景色(作:もっぴーさうんど様)


 目安時間:10分程度

 男女サシ劇※当て書きのため、性別変更不可

 語尾改変〇

 男性のみ 一人称変更〇(俺→僕)


【あらすじ】

 大切な人を見送って、何度目の春だろう…


【登場人物】

 男性:彼女と初めてお花見に行く人。

 女性:彼氏とお花見に初めて行く人。





男性:これは、俺と彼女の春の出来事。



男性:「桜、綺麗だなぁ」

女性:「そうだね」

男性:「お花見、誘ってくれてありがとう」

女性:「ううん。この公園の桜、有名なんだけど、穴場を見つけたから一緒に来てみたくて」

男性:「確かによく聞く公園だけど、ここは全然人が居ないもんなぁ」

女性:「人が多いところは疲れちゃうから」

男性:「分かる。騒がしいところが好きってやつもいるけど、静かな方が落ち着くよな」

女性:「うん。ここなら、のんびりできるし」

男性:「うん」


男性:彼女と出会って、何度目の春か。

   久しぶりに休みが重なり、初めての花見に来ていた。

   彼女から誘われた時は、ちょっとだけ憂鬱になっていた。



【場面転換】※少しだけ間をあける



男性:「もしもし?」

女性:「あ、今大丈夫?」

男性:「どうした?」

女性:「今度のお休み、近くの公園にお花見に行かない?」

男性:「花見?近くって、めちゃくちゃ混んでるとこだろう?」

女性:「場所はそうだけど、穴場を見つけたの」

男性:「へぇ。あそこに穴場スポットになるようなところがあるとは」

女性:「私も見つけたのは、偶然なんだけど。人混み苦手なのと、休みが合わなくて一度も行ったことなかったから」

男性:「確かに…じゃあ、行こうか」

女性:「よかった」

男性:「せっかく見つけてくれた場所なら、行きたいからな」

女性:「ありがとう。楽しみにしてるね」

男性:「俺も」


女性:彼と出会って、色々なところに出掛けたけど、近所で綺麗に咲いている桜を、一緒に見たことがなかった。

   こんなに綺麗なのに、独り占めしているのはなぁ…と毎年思っていたけど、誘えずにいた。

   でも、仕事の帰りに、いつもと違う道で公園の近くを通った時に一本の大きな桜の木を見つけた。

   これは、チャンスなのでは…と思い、誘った。



【場面転換】※少し間をあける



男性:「でも、なんで、ここにだけ桜を植えたんだろうなぁ」

女性:「不思議だよね」

男性:「うん」

女性:「…あのさ」

男性:「ん?」

女性:「私、仕事で少し遠くに引っ越すことになるの」

男性:「え?」

女性:「待っててほしい、なんて、言わないから。だから、せめて想い出が欲しかったの」

男性:「なんで、勝手に決めちゃうかなぁ」

女性:「え?」

男性:「俺は、ちゃんと待ってるし、別れたりしないよ」

女性:「…だって、いつ戻れるか分からないから」

男性:「それでもいいじゃん。俺は、ずっと、この桜の木と一緒に、ここで待ってるよ」

女性:「待っててくれるの?」

男性:「あぁ。どれだけ掛かってもいい。だから、ちゃんと戻ってきて」

女性:「うん、ありがとう」


男性:あれから、数年が経ち、俺は少しだけ後悔をしていた。

   待つのは少しだけ辛い。

   でも、それだけ、君のことが大切だと思える。

   だから、耐えてみせる。

   ずっと、君の傍に居るために。



(終わり)


SpecialThanks:ましょこさ 様、ミクロマコ 様

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