愛しいと思うのは君だけ


【詳細】

 2024年でライターとして3年が経ち、久しぶりにバレンタインに合わせた個人企画を。

 ある10個のタイトルの詩の中から選んで頂いたもので、お話を作成しています。

 今回の詩のタイトル【愛しい】【君だけ】

 目安時間:10分程度


 男女サシ劇:当て書きのため、性別変更不可

 語尾改変〇

 男性のみ人称変更可 ※ 『僕』→『俺』 


【あらすじ】

 施設育ちの2人は、お互いが大切で…


【登場人物】

 晃影(こうえい):男性

 千聖(ちさと):女性




晃影:僕は、君が愛しい

千聖:私は、君が愛しい


晃影:僕たちは、幼い頃からずっと一緒だ。

   だから、君が思わずやってしまう癖を、よく知っている。


晃影:「あ、またやってる(小声)」

千聖:「え?」

晃影:「何でもない」

千聖:「何?気になるんだけど」

晃影:「いいんだよ。これは僕だけの特権だから」

千聖:「…なんか、むかつく」

晃影:「何で?」

千聖:「自分のことなのに、コウくんの方が知っていることが」

晃影:「そう?千聖だって、僕以上に僕のこと、知ってるんじゃない?」

千聖:「さすがに…それはないと思うけど」

晃影:「いや、絶対あるって。あと「コウくん」って呼ぶの、辞めるんじゃなかった?」

千聖:「…それは、私の特権だから(小声)」

晃影:「え?」

千聖:「何でもない」

晃影:「そっか」


晃影:本人は、どうやら無自覚のようだ。

   千聖の癖…きっと、他の人からも言われたことがないのだろう。

   言われたら、気にしてすぐに直そうとするから。

   呼び方も「コウくん」と呼ぶのは、千聖だけ…というより、皆がそう呼ばなくなっただけなのだ。

   でも、ある時、誰かに言われたことが気になったらしく、本人は直す!と言ってたのが3日前。

   だけど、この様子だと、無理だと判断して辞めたらしい。


千聖:私たちは、施設の育ち。

   施設長に勧められて、高校へは普通に通うことになった。

   今までは、全然気にしていなかったけど、どうやら、コウくんはモテるらしい。

   私が今までのように「コウくん」と声を掛けているのを見て、おかしいと言われた。

   だから、頑張って直そうとしたけど…他の誰も呼ばないなら、私だけの特権だ!と思ってしまった。

   コウくんは、私のことなんて、何とも思っていないのだろうけれど。


晃影:「千聖。今週末、何か予定入ってる?」

千聖:「え?特にないけど」

晃影:「じゃあ、僕と出掛けよう」

千聖:「いいけど、どこに行くの?」

晃影:「千聖も好きなところだよ」

千聖:「好きなところ?」

晃影:「そう。帰ったら、施設長に出掛けること言わないとね」

千聖:「うん」


晃影:きっと、千聖は覚えていない。

   小さい頃にした約束を。

   僕は、絶対に忘れない。

   だって、他の誰でもない。君との約束なのだから。



【週末】- 夕方 -

※少し間をあける



晃影:「千聖、準備できた?」

千聖:「うん。大丈夫」

晃影:「じゃあ、行こう」


千聖:手を引かれるがまま、ついていく。

晃影:行き慣れたところだけど、はぐれないように手を繋ぐ。


千聖:「そんなに人多くないから、大丈夫だよ」

晃影:「僕が、こうしたほうが落ち着くんだよ」

千聖:「そうなの?」

晃影:「そう。」

千聖:「珍しいね」

晃影:「そうかな?」


千聖:高校生になって、周りの目というものを知ったから、ちょっと不安もあった。

   だけど、今までのように居てくれることが嬉しい。


晃影:本人は知らないのかもしれないけど、昔から、千聖は結構モテている。

   だからこそ、いつか僕のことを見なくなるんじゃないかと思ってしまう。

   それが嫌だ。


晃影:「着いたよ」

千聖:「展望台?」

晃影:「そう。今日からグランピングが臨時設置されてるんだ」

千聖:「あ、そうなんだ。でも、よく施設長が許してくれたね」

晃影:「僕らはもう、施設では大人みたいなものだからね」

千聖:「…確かに。下の子たちが多くなって、賑やかだもんね」

晃影:「だから、今日くらいは2人で遊んでおいでって言ってたよ」

千聖:「そっか」


晃影:僕たちは、もうすぐ施設を出ないといけない年齢になってきている。

   そうしたら、きっと、千聖と一緒にいることも少なくなる。

   だからこそ、こうして2人になれる時間は大切で。


千聖:この展望台は、施設から割と近くて、眠れない時とか落ち込んだ時に

   よく星を見に、コウくんと一緒に来ていた。

   確かに、私の好きな場所。

   何も考えずに、ただゆっくりと星を眺めながら、コウくんと一緒に居られるから。



【場面転換】※少し間をあける



晃影:夜になり、空にはたくさんの星が綺麗に輝いていた。


千聖:「こうして、部屋の中から見られるなんて、すごいね」

晃影:「そうだね。本当に晴れててよかった」

千聖:「満天の星空…天井が星でいっぱいな中で、コウくんと一緒に居られて嬉しいなぁ」

晃影:「喜んでもらえたみたいで、良かった」

千聖:「うん、ありがとう」


晃影:千聖は、昔から星が好きだった。

   この展望台も、星がよく見えるから好きだと言っていた。

   だから、ここにグランピング施設が臨時設置されるという広告を見た時に、絶対にここで言おうと決めていた。


晃影:「千聖」

千聖:「ん?」

晃影:「僕は、高校を卒業しても千聖と一緒に居たい」

千聖:「え?」

晃影:「目指す道は違うかもしれないけど、それでも、千聖とだけは離れたくないんだ」

千聖:「コウくん…」

晃影:「…昔の約束、覚えている?」

千聖:「約束?『何があってもずっと一緒に居ようね』って話していたやつ?」

晃影:「うん」

千聖:「忘れるわけがないよ。あの約束は、私にとって大切な宝物なんだから」

晃影:「宝物?」

千聖:「うん。ずっと一人だと思っていた私に居場所をくれた言葉だから」

晃影:「そっか」

千聖:「ねぇ、コウくん」

晃影:「ん?」

千聖:「コウくんが私を離したくないって思ってくれていたって知れて、本当に嬉しい」

晃影:「え?」

千聖:「私は、コウくんが好き。コウくんになら、自分の知らない自分を知られていてもいいって思える」

晃影:「千聖…」

千聖:「だから、これから先も一緒に居てください」

晃影:「こちらこそ」


晃影:気持ちを伝える前は、『僕と同じ想いで居てくれているのかな?』って思っていたけど…

   心配する必要はなかった。


晃影:愛おしいと思うのは君だけ。


晃影:傍に居てほしいと思うのも


千聖:傍に居たいと思うのも


晃影:離したくないと思うのも


千聖:離れたくないと思うのも


千聖:全て君だけ。



晃影:これから先も、ずっと君と歩んでいく。



(終わり)


SpecialThanks:くろろこ様

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