ありがとうは心の中で


【詳細】

 2024年でライターとして3年が経ち、久しぶりにバレンタインに合わせた個人企画を。

 ある10個のタイトルの詩の中から選んで頂いたもので、お話を作成しています。

 今回の詩のタイトル【ありがとう】

 推奨BGM:ひらひらり(作:もっぴーさうんど様)

 目安時間:10分程度


 語尾改変〇

 当て書きのため、演者・配役の性別変更不可


【あらすじ】

 来るバレンタインデー。あの人に誘われて、少し期待はしてたけど…

 大切な人からの贈り物には、仕掛けがあった。


【登場人物】

 男性:一緒に居たいと思っている人からの誘いを喜んでいる人

 女性:一緒に居てくれる人へ感謝を伝えたいけど、なかなか難しいと思っている人


女性:感謝が伝えるのが苦手な私の傍に、いつも居てくれるあなたに

   「今日こそは!」とバレンタインというイベントを理由に決意する。


男性:今日はバレンタイン。相手に想いを伝える日…

   そんな日に君から誘われて、偶然なのかもしれないけど

   それでも、ソワソワしている自分がいることに苦笑した。

   待ち合わせは、いつもの喫茶店。



【場面転換】- 喫茶店 –



女性:「お待たせ」

男性:「大丈夫だよ」

女性:「…結構待ったでしょ?」

男性:「えっ?」

女性:「飲んでるものを見れば、分かるよ」

男性:「あ…いや、今日はこれを先に飲みたかっただけで…」


男性:まさか、飲んでいるものでバレるとは…

   出掛けている時の行動を、彼女はよく観察しているようだ。


女性:「…そういうことにしておいてあげる」


男性:僕が何かをやった時に見せる冷ややかな目線と共に、そんなことを言われた。

   気のせいかもしれないが…彼女も何だか落ち着かない様子だ。


女性:どうして、こういう言い方しか出来ないのか…

   凄く自己嫌悪に陥りそうな所を、何とか気持ちを立て直す。


女性:「…あのさ」

男性:「あ、うん」

女性:「これを、渡したくて」


男性:少し、ぎこちなく差し出されたのは、綺麗にラッピングされた小さな箱だった。


男性:「ありがとう。開けてもいい?」

女性:「どうぞ」


【ラッピングを解き、箱を開ける】


男性:「お、トリュフ?」

女性:「うん…ここで食べないでよ?」

男性:「分かってるよ。でも、凄く美味しそうだから、楽しみだなぁ」

女性:「味の保証はしません」

男性:「絶対、美味しいよ。食べたら、感想を伝える」

女性:「別にいいよ…ただ、渡したかっただけだから」


男性:照れ隠し…と言っていいのか分からないけど。

   君が僕の行動をよく見ているように、僕も君のことは見ているつもりだ。


女性:とりあえず、渡せた…

   あとは、あなたが気付くかどうか。

   想いは口にしないと伝わらないと、よく言うけれど

   私には、難しい。

   だから…


男性:少し期待していたとはいえ、本当にもらえると

   嬉しさのあまり、ニヤけてしまう。


女性:「いつまで、ニヤけてるのよ」

男性:「え?だって、今貰ったばかりだし、もう少しくらい…」

女性:「あとは家に帰ってからにして」

男性:「分かったよ(苦笑)」


男性:しばらく世間話や近況を話して、今日は解散となった。

   どうやら、本当に渡すことだけが目的だったようだ。



【場面転換】− 男性の自宅 –



男性:帰宅してすぐに、先ほどもらった箱を開ける。


男性:「トリュフなんて、久しぶりだなぁ」


男性:職場では、市販の大袋に入ったチョコを男性全員で適当に分けることが多いから

   一口サイズになっている板チョコなんかが多い。

   だから、手作りを食べること自体が久しぶりなのだけれども…

   そんなことを考えながら、一粒、口に入れた。


男性:「うん。やっぱり、美味しい」


男性:自分好みの甘さで、手が止まらずあっという間に食べてしまった。

   もったいないなぁ、と思いつつ、箱を見ると、トリュフの入っていたところに

   何か引かれていることに気づく。


男性:「何だろう…あ、手紙だ」


男性:ご丁寧に汚れないように、きちんと梱包されている。

   袋から取り出し、中を読む。


女性:『無事に見つけてくれているといいなぁと思いながら、書いています。

    今回、トリュフを作ったのは、バレンタインに乗じて

    あなたに伝えたいことがあったから。

    私は、いつも誘ってくれるあなたに感謝しています。

    だけど、直接言うのは、やっぱり難しかったし、

    恥ずかしかったので、手紙にしました。

    お返しとかいらないので、これからも一緒に楽しく過ごせたら、嬉しいです』


男性:見つけられなかったら、どうするつもりだったんだろうか…

   いや、絶対に見つけると思っているから、こんなことをしているのか。

   ちゃんとお返しに関してまで書いているところが、彼女らしい。

   でも、返事くらいはさせてもらおう。


男性:「美味しかったよ。あと、想いはちゃんと受け取りました!と」



【場面転換】−女性の自宅 –



女性:「あ、見つけてくれたんだ」


女性:彼のことだから、些細な違いにも気づくだろう…と、手紙をトリュフの下に忍ばせた。

   ありがとうの気持ちは、心の中で。



【場面転換】



男性:暖かくも可愛らしい、彼女の気持ちを心の中に大切にしまっておこう。

   そして、次は僕がこっそりお返しをするんだ。

   君が口にできない分、僕から伝えよう。


男性:「ありがとう」



(終わり)


SpecialThanks:ましょまこ様、ミクロマコ様

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