想いは時を越えて~寿楽×千景~


【詳細】

 初の4人台本のペアで書いたお話。

 およそ15分ほどになります。


【関連作品】※掲載順、シナリオ早見表にリンク有

『平安~現代』※男2:女2

『寿楽×紅羽』※男1:女1

『千景×紫桜』 ※男1:女1

『紅羽×紫桜』 ※男0:女2

『寿里弥×紅葉』※男1:女1

『千景と紫桜の最期』※男2:女2、一部兼役あり

『現代編』※男2:女2

『寿里弥×美桜』※男1:女1

『紅葉×景太』 ※男1:女1

『景太×美桜』 ※男1:女1


【あらすじ】

 平安時代、陰陽師として仕事をしていた寿楽と千景。

 藤原の遠縁のお屋敷に仕事で行くことが多かった2人は…


【登場人物】

 寿楽(じゅらく):男性

  陰陽師の仕事をしている真面目な青年。


 千景(ちかげ):男性

 陰陽師として寿楽と一緒に仕事をしている青年。



寿楽:俺が千景(ちかげ)と出会ったのは、陰陽寮でだった。

寿楽:術を扱うのはあまり得意ではなかったが、なぜか直感などは、鋭かった。

寿楽:修行などの場で何度か一緒になるうちに、話すようになった。


千景:どちらも陰陽師家系、というわけではなかったが

千景:視える者は重宝される時代だったこともあり、優先的に仕事なども回ってきた。

千景:寿楽(じゅらく)とは、なんだかんだ話が合い、一緒に居ることが増えた。


千景:「ねぇ、寿楽(じゅらく)」

寿楽:「なんだよ、千景(ちかげ)」

千景:「なんで俺たちの仕事量だけ、こんなに多いんだと思う?」

寿楽:「それは俺たちの力が他の奴らより強いから、だろ?」

千景:「いやいや、もっと強い奴いるじゃん」

寿楽:「もし…紅羽(くれは)の事を言っているなら、対象外だぞ。あいつは女だ」

千景:「分かってるけどさ…あいつ、護身の為に術、習ってるじゃん」

寿楽:「あくまでも、護身の為、だからな。公(おおやけ)になってないんだ。

寿楽: どこかで聞かれて襲われたりしたらどうするんだ」

千景:「…そうだね。ごめん…」

寿楽:「まぁ、気持ちは分かるけどな。あいつの力は、この国の誰よりも強いだろうし」

千景:「続けるのかよ、この話」

寿楽:「名前を出さなければ、問題ないだろ?」

千景:「そういうもんかねぇ…あ、来たな」

寿楽:「そのようだな。さっさと片付けよう」



【場面転換】

- 妖退治の後 -



千景:「ふぅ、終わった」

寿楽:「終わったな」

千景:「この屋敷の結界、もう少し強めのにしてもらった方がいいと思う」

寿楽:「同感だ。陰陽頭(おんみょうのかみ)に進言しておく」

千景:「さすが筆頭陰陽師」

寿楽:「茶化すな」

千景:「ごめん。さて、帰りますか」

寿楽:「俺は、ここの姫に挨拶をしてから帰るが、お前も来るか?」

千景:「え?会えるの?」

寿楽:「あぁ。と言っても御簾越しだけどな」

千景:「それでも行けるなら、行こうかな」


千景:ついていくと、知っている気配がした。

千景:寿楽も心なしか、足が速くなっている。


寿楽:まさか、と思ったが、間違いではなかった。

寿楽:以前、お屋敷に妖退治に行ってから親しくなった、紅羽がそこに居た。



【場面転換】



千景:「しかし、驚いた」

寿楽:「何がだよ」

千景:「あいつが結界をあそこまで完璧に近い形で出来ることに」

寿楽:「あぁ…あいつは呑み込みが早いからな」

千景:「『教えなければよかった』なんて思ってないよね?」

寿楽:「え?」

千景:「確かにあいつは、呑み込みが早いかもしれないけど

千景: 術の腕は、お前ほどじゃないよ」

寿楽:「千景…」

千景:「だから、そんな顔するなよ」

寿楽:「そんな顔?」

千景:「『俺にはあいつを守る資格は…』みたいな顔してる」

寿楽:「っ!それは…」

千景:「お前があいつを守るんだよ。ほかの誰にも出来ないよ」

寿楽:「そうだな…ありがとう」

千景:「どうしたしまして!」



【場面転換】



寿楽:「千景。今、いいか?」

千景:「うん。どうしたの?」

寿楽:「今度、あいつとここから離れた所に移ることになった」

千景:「え?まさか…」

寿楽:「あぁ…おそらく、な」

千景:「そうなんだ」

寿楽:「あいつは、幸せだって言うんだよ」

千景:「え?」

寿楽:「屋敷から追い出されるようなものなのに」

千景:「それは、お前と一緒に居られるからじゃない?」

寿楽:「俺も嬉しいと思う。でも、申し訳ないとも思うんだ」

千景:「…本当に、お前はあいつのことだけは感情が落ち込むね」

寿楽:「お前だったら、自信を持てるのか?」

千景:「え?」

寿楽:「好きなんだろう?紫桜のこと」

千景:「っ!」

寿楽:「バレてないと思ってたのか?」

千景:「いつから?」

寿楽:「4人で何度か一緒に話しているうちに、様子が変わった…

寿楽:  いや、紫桜を見る時のお前の雰囲気が変わったから、かな?」

千景:「…そんなに分かりやすかった?」

寿楽:「まぁ、それなりに?でも、他にはバレてないだろうから、大丈夫だろう」

千景:「そっか」

寿楽:「あのさ、千景」

千景:「ん?」

寿楽:「ありがとう」

千景:「なんだよ、急に」

寿楽:「お前と一緒に仕事が出来たからこそ

寿楽: この縁(えにし)は結ばれたと思っているから」

千景:「…寿楽」

寿楽:「お前も、頑張れよ」

千景:「うん。お前みたいに飛ばされないようにしないとな」

寿楽:「そうだな。出世の知らせを楽しみにしている」

千景:「俺も、近況、楽しみにしてるよ」


寿楽:これが俺たちの最後の会話だ。

寿楽:俺は、紅羽と一緒に遠い地へ行き、生活をしていた。

寿楽:俺のところに次に知らせが来たのは…


千景:『寿楽。俺は、お前みたいにはなれなかった。

千景: でも、大切な人と最期まで居られたことだけは、褒めてよ』


寿楽:千景の最後の想いと一緒に

寿楽:紫桜と共に亡くなったという訃報だった。



(終わり)


Special Thanks:JUN様、くろろこ様

1コメント

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  • chao

    2023.08.21 14:05

    【CAST】寿楽:JUN 千景:くろろこ(※敬称略) テスト読みをして頂いたstand.fmのアーカイブです。 https://stand.fm/episodes/64a1809281ce9d7b5b01e861

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