想いは時を越えて～寿楽×紅羽～

【詳細】

　初の4人台本のペアで書いたお話。

　およそ１０分ほどになります。

【関連作品】※掲載順、シナリオ早見表にリンク有

『平安～現代』※男２：女２

『寿楽×千景』 ※男２：女０

『千景×紫桜』 ※男１：女１

『紅羽×紫桜』 ※男０：女２

『寿里弥×紅葉』※男１：女１

『千景と紫桜の最期』※男２：女２、一部兼役あり

『現代編』※男２：女２

『寿里弥×美桜』※男１：女１

『紅葉×景太』　※男１：女１

『景太×美桜』　※男１：女１

【あらすじ】

　平安時代、寿楽は陰陽師として仕事で向かったお屋敷で

　その屋敷の姫、紅羽に出会い…

【登場人物】

　寿楽（じゅらく）：男性

　　陰陽師の仕事をしている真面目な青年。

　　紅羽と出会い変わった。

　紅羽（くれは）：女性

　　藤原の遠縁のお姫様。

　　妖が視えることに苦労していたが、寿楽と出会い変わった。

寿楽：出会った時は、お前を好きになるなんて思っていなかった。

紅羽：出会ってすぐに、私はあなたに惹かれていた。

【紅羽の部屋の前】

寿楽：「紅羽（くれは）姫。お呼びとのことで、参りました。寿楽（じゅらく）と申します」

紅羽：「姫だなんて、紅羽と呼んでくださって良いのですよ」

寿楽：「それは、恐れ多く…っ！」

－ 紅羽、御簾から顔を出す －

寿楽：「何をなさっているのですか？！」

紅羽：「何をって、あなたの顔を見たくて。御簾越しでは見づらいもの」

寿楽：「藤原の血をお引きの方が、何をなさっているんですか！」

紅羽：「わたくしは遠縁です。姫などと呼ばれる身分でもありません」

寿楽：「遠縁と言えど、間違いなく、姫ですよ。

寿楽：　こんなところを、お父上に見られでもしたら

寿楽：　私とあなたのお付きの女房が困ります」

寿楽：俺の言葉に、女房が頷くのを見て、紅羽がとてもいい笑顔で話し始めた。

紅羽：「なら、お父様にわたくしから話しておきます」

寿楽：「え？」

紅羽：「わたくしが、自分の身を守ってくれている者を見たかったから、と。

紅羽：　お父様もわたくしの力はよく知っていますから、きっとご理解いただけます」

寿楽：「それは…さすがに良くないかと」

紅羽：「良いのです！」

寿楽：「（溜息）分かりました。

寿楽：　これはきっと、何を言っても諦めていただけなさそうですから」

紅羽：「えぇ。わたくしは一度決めたことを簡単には覆しません」

寿楽：「…そのようですね」

寿楽：俺の言葉を聞いて、女房を下がらせた紅羽の次の言葉で

寿楽：俺は、さらに混乱することになる。

寿楽：「女房を下げてよろしいのですか？」

紅羽：「えぇ。あなたと気さくに話をしたいですから」

寿楽：「ん？気さく？」

紅羽：「えぇ。寿楽、と言いましたね」

寿楽：「はい」

紅羽：「わたくしと話す時は、丁寧な言葉遣いは無用です」

寿楽：「っ？！」

紅羽：「聞こえませんでしたか？」

寿楽：「聞こえています。ですが、さすがにそれは…」

紅羽：「見たところ、わたくしと年も差ほど変わらないように思います」

寿楽：「・・・」

紅羽：「目上の方にならば、ともかく、年の変わらぬ者とは気さくに話がしたいのです」

寿楽：「…私からすれば、目上なのですが」

紅羽：「私がいいと言っているの。話し方を変えて」

寿楽：「・・・」

紅羽：「寿楽」

寿楽：「（溜息）分かった…ただし！」

紅羽：「何かしら？」

寿楽：「ほかの人の前では、絶対に目上として話すからな？！」

紅羽：「えぇ。構わないわ」

寿楽：これが、紅羽との出会い。

寿楽：今思えば、命知らずなことをしていると思う。

寿楽：数日、この屋敷の護衛として呼ばれ、妖退治をしていた。

寿楽：それでまさか、屋敷の姫と対面することになろうとは…

紅羽：寿楽との出会いは、偶然だったのかもしれない。

紅羽：毎日、大きな妖が来る度に追い払ってくれる陰陽師とは

紅羽：どのような方なのか、お会いしてみたかった。

紅羽：てっきり、年配の方かと思えば、年の変わらない青年だった。

紅羽：惹かれずにはいられなかった。

紅羽：年の近い青年は皆、私の力のことを知って、近づきたがらないのだから。

【場面転換】

－ とある日の夜 －

寿楽：「紅羽、呼んだか？」

紅羽：「えぇ。外が随分騒がしい気がするのだけれど」

寿楽：「あぁ…今日は妖たちにとって特別な夜だからな」

紅羽：「特別な夜？」

寿楽：「あぁ。妖にとって、力が最大限まで高まると言われている日なんだ」

紅羽：「そう（不安そうに）」

寿楽：「大丈夫だ。ここは、結界で守られているから、ここから出なければ、何も起きない」

紅羽：「寿楽がそういうのなら、そうね」

寿楽：「お前にとっては、うるさい夜かもしれないが…」

紅羽：「ねぇ、寿楽。そこに居てくれないかしら」

寿楽：「え？」

紅羽：「今日はここに居てほしいの」

寿楽：「分かった。だから、安心して寝ろ」

紅羽：「ありがとう」

寿楽：「…紅羽」

紅羽：「何？」

寿楽：「大丈夫だと思うが、念のために渡しておく」

－ 紅羽、御簾から手を差し出し、受け取る －

紅羽：「これは？」

寿楽：「お守りだ」

紅羽：「お守り？」

寿楽：「あぁ、離すなよ？」

紅羽：「えぇ。…っ！」

寿楽：「紅羽？」

紅羽：「寿楽、あれは…何？」

寿楽：「あれ？」

寿楽：紅羽に言われ振り向くと、大きな妖がこっちを見ていた。

寿楽：「っ！！紅羽、奥にいろ！」

紅羽：「え？」

寿楽：「いいか？絶対にここから出るなよ？！」

紅羽：「…分かったわ」

寿楽：「こんな奴に気付かないなんてな」

寿楽：「…気合入れないとな」

紅羽：寿楽が戦っている姿を、御簾越しに見つめる。

紅羽：今までに見たことのない大きな妖だった。

紅羽：『寿楽が傍に居なかったら』そう思ったら怖くなった。

紅羽：しばらくして、寿楽が妖を退治して戻ってきた。

寿楽：「紅羽、もう大丈夫だ」

紅羽：「寿楽！」

－ 紅羽、御簾から出て寿楽に抱きつく －

寿楽：「っ！おい、妖の血がついてるんだ！離れろ！」

紅羽：「怖かった…」

寿楽：「…紅羽」

紅羽：「寿楽が私を守るために、あんな大きな妖と戦っているのに、私は何もできなくて」

寿楽：「俺は、お前を守るためにいるんだ」

紅羽：「それでも…好きな人が傷つくのは、見たくないわ」

寿楽：「え？」

紅羽：「寿楽、私はあなたが好き」

寿楽：「え？…だって、お前」

紅羽：「お父様の決めた相手は皆、私の力を知ると離れるの。

紅羽：　藤原の遠縁なんて、そんなものよ」

寿楽：「・・・」

紅羽：「寿楽。私はあなたが（いいの）」

寿楽：「（さえぎって）俺も好きだよ。だから、守りたい」

紅羽：「え？」

寿楽：「だけど、お前は姫だ。分かっているけど、諦めきれなくて…」

紅羽：「寿楽…」

寿楽：「だから、何があっても傍に居て陰から守るって決めていた」

紅羽：「え？」

寿楽：「この屋敷のお抱え陰陽師になるって」

紅羽：「・・・」

寿楽：「紅羽。

寿楽：　俺たちが良くてもお前のお父上にとっては、俺たちの関係はきっと良くないんだ」

紅羽：「そうね…」

寿楽：「このことを知ったら、きっと、ここには居られなくなる。

寿楽：　だから、時が来るまでは…俺がもう少し力をつけるまで待っててくれ。

寿楽：　必ず、納得させてみせるから」

紅羽：「寿楽…分かったわ」

－ 寿楽、紅羽をさらに強く抱きしめる －

寿楽：「好きだ、紅羽」

紅羽：「えぇ。私も」

紅羽：それから、しばらくして、護衛に千景が一緒に付くようになった。

紅羽：2人は何度も私のことを守ってくれた。

紅羽：だけど、何も出来ない自分がやっぱり嫌で

紅羽：寿楽に無理を言って、術を教えてもらうようになった。

紅羽：私も、寿楽。あなたを守りたいと思ったから。

寿楽：紅羽の護衛になって、半年が経ち、千景が一緒に仕事をするようになった。

寿楽：しばらくして、紅羽が術を覚えたいと言い出した。

寿楽：『護身のためなら』と教えることにしたが、これが紅羽の父上の逆鱗に触れてしまい

寿楽：結果的に２人で遠い地に住まいを移すことになった。

紅羽：「ねぇ、寿楽」

寿楽：「ん？」

紅羽：「私はあなたが好きよ」

寿楽：「今更だな…俺の方がお前を好きだ」

紅羽：「お屋敷に居たら、きっと、こんな風に言うことは出来なかったでしょうね」

寿楽：「そうだな」

寿楽：2人で遠い地に来て1年経った今でも

寿楽：『何があっても紅羽を守っていく』

紅羽：『何があっても寿楽の傍に居る』

寿楽：この気持ちは

紅羽：変わることはない。

（終わり）

Special Thanks：JUN様、紅山楓 様