大好き
≪詳細≫
こちらは1人読みシナリオ
2作を合わせて追記したお話です。
およそ20分ほどとなります。
※男性に関しては()で表記してある人称への変更は可とします。
≪あらすじ≫
これはある晴れた日にとある理由で別れた恋人との思い出のお話。
「あぁ…また君に会いたいな」
≪登場人物≫
男性…とある女性に一目惚れした人。
※男性に関しては()で表記してある人称への変更は可とします。
女性…とある男性に一目惚れされた人。
男性:これは俺(僕)と彼女の七年間の思い出。
女性:「いらっしゃいませ。一名様ですか?」
男性:「あ…はい」
女性:「かしこまりました。こちらへどうぞ」
男性:「笑顔が素敵な人だなぁ」
男性:これが彼女の第一印象だった。
男性:そして、その笑顔に俺(僕)は一瞬で惹かれた。
男性:一目惚れとはこういうことなのか。と思った。
男性:それからほぼ毎日、店に通った。
男性:彼女に会いたいってだけで行っていたから、会えない時は少し寂しかった。
男性:だから、彼女に会える時は声を掛けた。
男性:「こんばんわ」
女性:「いらっしゃいませ。いつもありがとうございます」
男性:「あ、どうも」
女性:「(笑)じゃあ、こちらのお席へ」
男性:「あ、はい」
男性:店に通い始めて一年が経とうとしていた。
男性:正直、自分がここまで通い詰めることが出来るとは思ってなかった。
女性:「あ、いらっしゃいませ。本当にほぼ毎日いらっしゃいますね(笑)」
男性:「ここの食事、美味しんで」
女性:「それだけですか?」
男性:「えっ?」
女性:「(笑)冗談です」
男性:「なんで…」
女性:「なんだか、寂しそうだったので(笑)」
男性:「そうかなぁ」
女性:「はい。この半年くらいずっと、話しかけてくださるのが嬉しかったんです」
女性:「だから、いらっしゃらないとちょっと寂しいなぁって思ったりして」
男性:「えっ?そうなの?」
女性:「はい。だから、お会い出来て良かったって思ったら、からかいたくなってしまって(笑)」
男性:「なんだよ、それ」
女性:「(笑)ごめんなさい。いつものでいいですか?」
男性:「あ、うん」
女性:「かしこまりました。少々お待ちください」
男性:彼女はそう言って、オーダーを伝えに行った。
男性:寂しいって思ってもらえているなんて嬉しいな…と素直に思った。
男性:そんな日から少し経った頃、店に行くと彼女から声を掛けられた。
女性:「お客様、失礼します」
男性:「珍しいね、注文取った後に来るなんて」
女性:「今は少し手が空いているので(笑)あの、よかったら、今度食事に行きませんか?」
男性:「えっ?」
女性:「もっとお話ししてみたくて。いつも仕事中だから」
男性:「あぁ…」
女性:「ダメ、ですか?」
男性:「…しょうがないから、行く」
女性:「(笑)ありがとうございます」
男性:正直、彼女から食事に誘われるなんて思ってもいなかった。
男性:だからこそ、驚いて…思わず素っ気ない感じになってしまった。
男性:でも、内心すごく嬉しくて…照れくさくて。
女性:「じゃあ、次のお休みの予定、合わせて出掛けましょう!」
男性:「うん」
男性:それから彼女と色々なところに出掛けた。
男性:出掛ける度に、共通点が見つかる。
女性:「あ、見て!」
男性:「ん?」
女性:「こういうの好きなんだよね」
男性:「俺(僕)も。本当に好みが似てるなぁ」
女性:「本当だね(笑)」
男性:「ここまで共通点があると親友みたい」
女性:「そうだね」
男性:「思ってる?」
女性:「思ってるよ!じゃあ、これからはただの友人じゃなくて」
女性:「親友として、よろしくお願いします」
男性:「改められると、なんか照れる(苦笑)」
女性:「えぇ~」
女性:彼との共通点が見つかるのは楽しかった。
女性:親友になっても、どんどん共通点が増えていく、不思議な感覚が心地よい。
女性:でも、ある時、気付いた。
女性:彼に惹かれていたのは、好きだからだと。
男性:ただの友人でいいと思っていた。
男性:彼女との関係を崩して、離れられてしまう方が怖いと思った。
男性:だから、一目惚れしたことも『好きだ』ということも自分の心の中だけにした。
男性:そして、親友として過ごすことに決めたんだ。
男性:親友になってから、何度目かの出掛けている最中に彼女があんなことを言うまでは…
女性:「大好き」
女性:もう何度目になるか分からないお出掛けの最中、ふと、思ったことが言葉に出る。
女性:伝えようと思っていたわけじゃない。
女性:本当に不意に言葉が出て、想いを告げていた。
男性:お前(君)が俺(僕)を想っていたこと
男性:俺(僕)は気付かなかった。
男性:いや…気付かないふりをしていた。
男性:今までの関係を崩すことを恐れていたから。
女性:でも、恐れる必要なんてない。
女性:二人には絆があるから。
女性:今までも、これからもずっと変わらない絆が。
女性:それがあれば、どんなことでも乗り越えられる。
女性:だから、いつまでも一緒に…
女性:そう思っていたのに…
女性:運命は残酷だと思った。
男性:彼女と付き合って三年が経とうとしていた頃、彼女が病気になった。
男性:最初はなんてことないって感じだったのに、だんだん、外に出られなくなって…
女性:「あ、今日も来てくれたんだ」
男性:「うん…どう?調子」
女性:「うん…今日はいいかな?」
男性:「検査結果は?」
女性:「それは…微妙」
男性:「そっか…」
女性:「ねぇ」
男性:「ん?」
女性:「私のこと、放っておいてもいいんだよ?」
男性:「それは出来ない」
女性:「なんで?」
男性:「だって、俺(僕)の初めて一目惚れした大切な彼女が」
男性:「辛い顔してベッドに横になってるんだから」
女性:「…そうだけど。私はあなたに苦しんでほしくないよ?」
男性:「苦しくないよ」
女性:「嘘…」
男性:「嘘じゃない」
女性:「…後悔しない?」
男性:「しない」
女性:「そっか」
男性:それからしばらくして、彼女に病院に呼ばれた。
男性:なんだか、嫌な予感がしていた。
男性:それでも、彼女の病室に行く。
男性:何があっても、傍に居たいと思っていたから。
女性:「あ、来てくれたんだ」
男性:「当たり前じゃん」
女性:「(笑)そうだね」
男性:「何かあった?」
女性:「大したことじゃないの。ただ、今日の天気が凄く良かったから、散歩したくて」
男性:「あぁ、確かに。日差しが暖かかった」
女性:「でしょ?だから、一緒に散歩して?」
男性:「いいよ」
男性:彼女に言われ、病院の中庭に出た。
男性:中庭に出て、彼女が一言。
女性:「今日は日差しが暖かいね」
男性:「うん」
女性:彼にこんな顔をさせてしまうなんて…
女性:私が病気にならなければと何度思ったか分からないけど。
女性:それでも…最後は彼と一緒がいいと思ったから。
男性:彼女の一言が、すごく暖かさを感じられるのに、なんだか切なくて。
男性:嫌な予感が外れてほしいと思ったのに、そうはいかなそうだと、察した。
女性:「ねぇ」
男性:「何?」
女性:「私のお願い、聞いてくれてありがとう」
男性:「急にどうしたの?」
女性:「もう、眠くなってきてるんだよね」
男性:「…そっか。日差し、心地いいもんなぁ」
女性:「うん…」
男性:「寝ていいよ。ゆっくり休みな?」
女性:「…嫌だなぁ。もっと話してたい」
男性:「本当に、どうした?」
女性:「…ねぇ、私の事、好き?」
男性:「うん、好きだよ」
女性:「どのくらい?」
男性:「めちゃくちゃ」
女性:彼に『大好き』と言ってほしくて問いかけると、いつもの調子…
女性:ではなく、少し涙目で…それでも、きっと彼の優しさなのだろう。
女性:最後に見た顔は、泣きながらの笑顔だった。
女性:「ごめんね、そんな顔をさせて」
女性:私は思わず、謝ってしまった。
女性:でも、最後の言葉にしたくなくて、続けた。
女性:「あぁ、またあなたに逢いたいな」
女性:「今度は、ずっと一緒だから」
女性:「最後まで言ってくれなかったけど、今度は聞かせてね」
女性:『大好き』
男性:彼女の最後の言葉は『最後まで言ってくれなかったけど、今度は聞かせてね』だった。
男性:その言葉の意味は、俺(僕)には分かる。
男性:結局、最後までごまかしてしまった。
男性:最後だと分かっていた、はずなのに…
男性:あれから三年経った今でも、それだけは後悔している。
男性:俺(僕)がこんなことを思っているのは、あの日の天気に今日が似ているからだろう。
男性:『いつまでも一緒に…』
男性:そう思っていたのに。
男性:お前(君)は居なくなった。
男性:今日みたいに日差しの暖かい日に。
男性:最後に見た顔は、大好きな笑顔だった。
男性:あぁ、またお前(君)に逢いたいな。
男性:今度は、ずっと一緒だから。
男性:最後まで、ちゃんと言えなくてごめん。
男性:『大好き』
(終わり)
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