想いは時を越えて~寿里弥×美桜~
【詳細】
初の4人台本のペアで書いたお話。
およそ10分ほどになります。
【関連作品】※掲載順、シナリオ早見表にリンク有
『平安~現代』※男2:女2
『寿楽×紅羽』※男1:女1
『寿楽×千景』 ※男2:女0
『千景×紫桜』 ※男1:女1
『紅羽×紫桜』 ※男0:女2
『寿里弥×紅葉』※男1:女1
『千景と紫桜の最期』※男2:女2、一部兼役あり
『現代編』※男2:女2
『紅葉×景太』 ※男1:女1
『景太×美桜』 ※男1:女1
【あらすじ】
幼馴染の2人のお話。
どうして、寿里弥は、美桜のことを常に守ろうとするのか…
【登場人物】
芦屋寿里弥(あしや じゅりや):男性
寿楽の生まれ変わり、本人はその自覚がない。
『視える』家系のため、幼い頃に一通りの術は教わっている。
藤宮美桜(ふじみや みお):女性
紫桜の生まれ変わり、本人はその自覚がない。
『視えるだけ』で術は何も扱えない。
妖に狙われやすいため、寿里弥が一緒に居ることが多い。
寿里弥:守りたいと思ったのは、いつだったか。
美桜:守られるようになったのは、いつだったかな。
【藤宮家】‐玄関‐
寿里弥:「美桜~、居るか?」
美桜:「は~い、どうしたの?」
寿里弥:「これ」
美桜:「うわぁ、寿里弥のお手製おはぎだ。懐かしい」
寿里弥:「ちょっと作りすぎたから、お裾分け」
美桜:「ふ~ん」
寿里弥:「…なんだよ」
美桜:「いや、最近よく手料理作ってるなぁと思って」
寿里弥:「そんなことないと思うけどな」
美桜:「まぁ、いっか。せっかくだし、一緒に食べる?」
寿里弥:「あぁ、そうだな。久しぶりに食べるか」
美桜:「じゃあ、先に縁側行ってて。お茶入れてくる」
寿里弥:「分かった」
― 縁側 ― ※少し間をあける
美桜:「はい、お待たせ」
寿里弥:「さんきゅー」
美桜:「ねぇ、最近料理をしてるのって、彼女さんへの手土産?」
寿里弥:「っ!(むせる)」
美桜:「ふふっ、図星だった?(いたずらっぽく)」
寿里弥:「美桜…」
美桜:「ごめん、大丈夫?」
【美桜がタオルを差し出し、寿里弥が受け取る】
寿里弥:「ったく…急になんてこと言い出すんだ。お前」
美桜:「だって、前に神社で会ったって言ってた人と付き合うことになったんでしょ?」
寿里弥:「俺…その話、したか?」
美桜:「ううん。視ていたら、分かるよ」
寿里弥:「そうだった…」
美桜:「私の取柄は『視ること』だからね」
寿里弥:「視えすぎるのも、困りものだなぁ」
美桜:「大丈夫。あの頃とは、違うよ」
寿里弥:美桜とは幼馴染で、ずっと一緒だった。
寿里弥:俺がまだ未熟だったせいで、美桜に怖い思いをさせたことがある。
寿里弥:今でも夢に見るくらいの後悔はしている。
美桜:藤宮家は旧家で、芦屋家は陰陽師の家系で、家が隣同士。
美桜:術の修行にもついていっていたけど
美桜:当時の私は『視えすぎている』ということに気付いていなかった。
美桜:その時に起きたことを、寿里弥がずっと気にしていることも知っている。
【場面転換】
‐3年前‐
美桜:「寿里弥、お疲れ様」
【寿里弥にタオルと飲み物を渡す美桜】
寿里弥:「さんきゅー…にしても、いつもついてくるけど、楽しくないだろ?」
美桜:「そんなことないよ。私は出来ないことだし、見てて面白いよ」
寿里弥:「面白いのか?」
美桜:「うん。寿里弥の使う術の波動とか、色々見えてアトラクションみたいだもん」
寿里弥:「へぇ」
美桜:「気が散るなら、少し離れたところにいるけど」
寿里弥:「離れられた方が、気が散る」
美桜:「そうなの?」
寿里弥:「おばさんたちから、お前の子守を頼まれているからな」
美桜:「私、そこまで小さい子じゃないんだけど」
寿里弥:「俺から見たら、まだまだお子様だよ」
美桜:「ひどい言い方」
寿里弥:「とにかく、目の届かない所に勝手に行くなよ。修行が終わるまで」
美桜:「うん…」
美桜:そう言われていたのに…
美桜:私は、約束を破って、寿里弥の目を盗んで少し離れてしまった。
美桜:修行をしている寿里弥を見ていた時に
美桜:視界の端に何か見えた気がして、追いかけてしまった。
寿里弥:美桜のことを妹のように大切に思っていたし
寿里弥:芦屋家は代々藤宮家を守っていることも、祖父から言い聞かされていた。
寿里弥:理由は、藤宮家は、稀に視える人が生まれることもあり、陰陽師家系の家と関係を持っていたらしい。
寿里弥:そんなことを考えながら、修行をしていたことで、美桜が傍に居ないことに気付けなかった。
美桜:「嫌!来ないで!」
寿里弥:「美桜?…美桜!どこに居るんだ?!」
寿里弥:美桜の姿が見えないことで、焦ってしまって、声を荒げてしまった。
寿里弥:それに気づいて、少し冷静になった。
寿里弥:祖父から『どんな時も落ち着いて状況を把握することが
寿里弥:陰陽師にとっては大切なことだ』と教えられていたことを思い出して。
寿里弥:「…落ち着け、俺。きちんと状況を把握するんだ」
美桜:寿里弥の言っていた通り、傍に居るべきだった。
美桜:離れた時に結界から出てしまったことに、あとから気付いた。
美桜:そして、追いかけたものの正体を、はっきり認識した時には、逃げられない状態になっていた。
寿里弥:「やっと、見つけた」
寿里弥:ようやく、美桜の居場所を見つけた。
寿里弥:そして、美桜の近くに居る妖の大きさに、少し恐怖を感じながら、急いで向かった。
【寿里弥が美桜のところにたどり着く】※少し間をあける
寿里弥:「美桜!」
美桜:「寿…里弥…ダメ…」
寿里弥:美桜のところに辿り着いて、見た光景に言葉を失った。
寿里弥:修行場所は、代々芦屋家が保有している山で、結界を2重にしてある。
寿里弥:1つは山全体、もう1つは、修行用に仕切るために張られている。
寿里弥:祖父から聞いていた結界の外の怖さというものを初めて目の当たりにした。
寿里弥:美桜は、結界の向こう側で大蜘蛛に捕まっていた。
寿里弥:「美桜、大丈夫だ。俺が助けるから」
美桜:「寿里弥…ごめ…なさ…」
寿里弥:「美桜!…悩んでる暇はない。
寿里弥: 臨(りん)・兵(びょう)・闘(とう)・者(しゃ)・皆(かい)・陣(じん)・列(れつ)・在(ざい)・前(ぜん)」
寿里弥:どうにか、美桜と大蜘蛛を離すことが出来た。
寿里弥:その隙を見逃さずに、美桜の前に立ち、結界を張った。
【結界の中】
寿里弥:「美桜!」
美桜:「寿里弥…」
寿里弥:「よし、無事だな…っ!」
美桜:「寿里弥…ケガ、してる」
寿里弥:「大丈夫だ。大したことない。帰るぞ」
美桜:「うん…」
美桜:この後、私たちは家に無事に辿り着いた。
美桜:だけど、安心したからなのか、寿里弥は数日寝込んでいた。
寿里弥:追手が来ないことを確認しながら、震えている美桜を抱えて家に帰った。
寿里弥:藤宮家を出た後、俺は玄関で倒れていた所を両親に見つけられ、部屋に運ばれたらしい。
【数日後】
寿里弥:「ん…ここは」
美桜:「寿里弥!気が付いた?」
寿里弥:「美桜…?」
美桜:「うん」
【美桜、寿里弥に抱きつく】
美桜:「よかった…このまま、目が覚めないかと思った」
寿里弥:「ごめんな、心配かけて」
美桜:「ううん。私がいけないの。
美桜: ちゃんと言うことを聞かなかったから…ごめんなさい」
寿里弥:「いや…俺の力不足だ。だから、自分を責めるな」
【寿里弥、美桜を撫でる】
美桜:「寿里弥が、家まで運んでくれたって、お母さんたちに聞いた」
寿里弥:「お前、震えてたし、途中で気を失ってたから、覚えてないのも無理ないよ」
美桜:「あんな大きい妖、見たことなかったから…」
寿里弥:「俺も初めて見たよ。でも、美桜。何で離れたんだ?」
美桜:「寿里弥の修行を見ていた時に、視界の片隅で何か見えた気がして…」
寿里弥:「気になって、追いかけた…と」
美桜:「うん…本当にごめんなさい」
寿里弥:「もういいって。お前も俺も無事なんだから」
美桜:「寿里弥…ありがとう」
寿里弥:「あぁ」
【現在】※少し間をあける
美桜:「寿里弥?どうしたの?」
寿里弥:「え?あぁ…すまない。ちょっと昔のことを思い出してた」
美桜:「そっか。ねぇ、寿里弥」
寿里弥:「ん?」
美桜:「いつか、会わせてね」
寿里弥:「誰に?」
美桜:「寿里弥の彼女さんに」
寿里弥:「…何でだよ」
美桜:「お礼を言いたいから」
寿里弥:「お礼?」
美桜:「うん。だって…」
寿里弥:「何だよ」
美桜:「秘密!」
美桜:寿里弥が、私を守ることから解放されるきっかけを作ってくれた人だから。
美桜:なんて、寿里弥には言えないけど。
美桜:寿里弥が守る人は、私じゃないんだって、ちゃんと思ってほしい。
寿里弥:美桜が紅葉(もみじ)に会いたいと思っているとは、予想外だった。
寿里弥:でも、紅葉にも会わせてほしいと言われていたから、ちょうどいいかと思った。
寿里弥:美桜のことを守るのは、俺では力不足だが、景太なら、きっと。
美桜:もう心配させないために、私は視える力を隠す。
寿里弥:大切な人たちを悲しませないために、俺は守る力を磨いていく。
(終わり)
SpecialThanks:JUN様
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