想いは時を越えて~ 現代編 ~
【詳細】
『想いは時を越えて』シリーズの現代編。
およそ、20分ほどになります。
【関連作品】※掲載順、シナリオ早見表にリンク有
『平安~現代』※男2:女2
『寿楽×紅羽』※男1:女1
『寿楽×千景』 ※男2:女0
『千景×紫桜』 ※男1:女1
『紅羽×紫桜』 ※男0:女2
『寿里弥×紅葉』※男1:女1
『千景と紫桜の最期』※男2:女2、一部兼役あり
『寿里弥×美桜』※男1:女1
『紅葉×景太』 ※男1:女1
『景太×美桜』 ※男1:女1
【あらすじ】
現代に転生し、記憶を持つ紅葉と景太。
過去の記憶を持たない寿里弥とその幼馴染の美桜。
それぞれの想いは…
【登場人物】
芦屋寿里弥(あしや じゅりや):男性
寿楽の生まれ変わり、本人はその自覚がない。
『視える』家系のため、幼い頃に一通りの術は教わっている。
紅葉の恋人。
土御門紅葉(つちみかど もみじ):女性
紅羽の生まれ変わり。代々陰陽師の家系の土御門家のお嬢様。
前世の記憶を持っているため、寿楽の生まれ変わりを探していた。
寿里弥の恋人。
藤宮美桜(ふじみや みお):女性
紫桜の生まれ変わり。前世の記憶はない。
寿里弥の幼馴染。
土御門景太(つちみかど けいた):男性
千景の生まれ変わりで、前世の記憶を持っている。
紅葉の弟。
寿里弥:俺たちが出会ったのは、偶然なのか、必然なのか。
美桜:私たちには、分からない。
紅葉:私たちが出会ったのは、運命だと信じていいのか。
景太:だから、僕たちは追い求めているのか。
寿里弥:「美桜(みお)、支度出来たか?」
美桜:「あと少し!」
寿里弥:「まったく…お前は、昔から準備に時間かかるよな」
美桜:「女の子はみんなそうです!
美桜: まさかと思うけど、彼女さんにそんなこと言ってないよね?」
寿里弥:「あぁ、言わないな」
美桜:「…ならいっか」
寿里弥:「なんだよ」
美桜:「何でもない…支度終わったから、行こう」
【場面転換】
景太:「姉さん、そろそろ時間だよ」
紅葉:「分かってるわ」
景太:「でも…よく、気付いたね」
紅葉:「え?」
景太:「寿里弥(じゅりや)さんの幼馴染が紫桜(しお)の生まれ変わりだって」
紅葉:「確証があるわけじゃないわ。もしかしたらって思っただけ」
景太:「そうなの?」
紅葉:「…景太(けいた)の想い人も早く見つかってほしいもの。
紅葉: 可能性があるなら、会ってみてほしいって思ったの」
景太:「姉さん…」
紅葉:「ごめんなさい…お節介よね」
景太:「そんなことないよ。ありがとう」
景太:姉さんは、いつでも僕のことを考えてくれている。
景太:僕も、早く姉さんの力になりたいって思いながら、鍛錬してきた。
景太:そして…記憶の片隅にある、あの悲劇を繰り返さないためにも。
【場面転換】
- 喫茶店・個室 -
紅葉:「寿里弥、お待たせ」
寿里弥:「いや。俺たちも今、来たところだから」
景太:「寿里弥さん、お久しぶりです」
寿里弥:「あぁ、久しぶり」
紅葉:「あなたが、美桜さん?」
美桜:「はい…初めまして、藤宮美桜(ふじみや みお)です」
紅葉:「初めまして、土御門紅葉(つちみかど もみじ)です。…それでこっちが、弟の景太です」
景太:「土御門景太(つちみかど けいた)です」
美桜:「・・・」
寿里弥:「ん?美桜、どうした?」
美桜:「え?…ううん、何でもない」
寿里弥:「お前、そればっかりだな」
美桜:「そんなことないでしょ?」
寿里弥:「まぁいいか。2人は何にする?」
紅葉:「私はホットのダージリンにするわ」
景太:「僕はアイスコーヒーで」
寿里弥:「了解」
(少し間をあける)
紅葉:「美桜さんは、寿里弥とは幼馴染なんですよね?」
美桜:「はい。家が隣なので、ずっと一緒ですね」
寿里弥:「昔は素直で可愛かったんだけどなぁ」
紅葉:「あら、今も可愛いじゃない」
美桜:「いつもこうやってからかうんです」
景太:「これは、からかってるんですか?」
寿里弥:「俺は、そんなつもりはないんだけどな」
美桜:「無自覚って怖いよね」
紅葉:「本当に…寿里弥って昔から考えてから行動するタイプなのに、ときどき感情のまま動いちゃうからびっくりするわ」
美桜:「あ、分かります!」
寿里弥:「紅葉の“昔”は、絶対、今の俺じゃないだろ」
紅葉:「そんなことはないわよ?付き合ってからも何度か驚かされているもの」
寿里弥:「…そんなことしたか?」
紅葉:「しているわよ」
景太:「姉さんも、昔から驚くようなことしてたからお互い様じゃない?」
紅葉:「どういう意味?」
景太:「そのままだよ。屋敷のみんなだって、いつも振り回されているじゃないか」
紅葉:「・・・(拗ねた感じ)」
寿里弥:「紅葉も景太には敵わないと」
紅葉:「寿里弥まで!」
美桜:「ふふっ」
寿里弥:「…どうした?美桜」
美桜:「あ…ごめんなさい。なんか、みんなの会話聞いてたら、楽しくて」
寿里弥:「そうか?大体いつもこんな感じだぞ」
美桜:「(微笑みながら)なんだか…皆さんのやり取りが懐かしいというか…不思議な気持ちになって…なんか楽しいなって」
紅葉:「美桜さん」
美桜:「はい?」
紅葉:「その気持ちは、きっと大切な気持ちだと思うから、ずっと忘れないでね」
美桜:「?はい」
景太:姉さんの言葉は言霊になる。
景太:きっと、彼女が『紫桜』だと、姉さんは確信したんだ。
景太:だからこそ、忘れてしまわないように…
紅葉:私の言葉は、少し力を込めれば、相手の心に残る。
紅葉:咄嗟にしてしまったことだけど、本心で伝えたいと思ったから仕方ない。
紅葉:間違いなく、景太の大切な人なのだと、思えたから。
寿里弥:紅葉と景太は、前世の記憶があり、当時の生まれ変わりの相手を探していた。
寿里弥:俺は前世の記憶はないけど、紅葉と出会ったことで少しだけ、気持ちが分かるようになった。
寿里弥:ずっと前からの大切な人に、恋焦がれる気持ちが。
美桜:この時の私には、紅葉さんの言葉の意味は分からなかった。
美桜:だけど、忘れたくない気持ちだと思った。
【場面転換】
― 公園 ―
寿里弥:「いやぁ、本当に天気が良くてよかった」
美桜:「そうだね。お弁当もおいしく食べられそう」
寿里弥:「俺の弁当は、天気に左右されないぞ?」
美桜:「ん?分かってるけど」
景太:「すみません。姉さんが急にピクニックしたいなんて言うもんだから、喫茶店に行く前にこちらも何か用意しようとはしたんですけど…」
寿里弥:「気にしなくていいって。俺、料理好きだし」
美桜:「紅葉さん、寿里弥の手料理、気に入ったみたいだもんね」
寿里弥:「そうなのか?まぁ、確かに今回はリクエストが多かった」
景太:「昔から、自由奔放というか、なんというか…」
寿里弥:「俺は、そういう所も好きだから、安心しろ。景太」
景太:「(笑って)ご馳走様です…そう言ってもらえると助かります」
紅葉:「ねぇ、寿里弥~。ちょっと来てくれない?」
寿里弥:「ん?準備終わったら行くから、ちょっと待ってくれ」
美桜:「行ってきなよ」
寿里弥:「でもなぁ」
美桜:「こっちはもう少しで終わるし、大丈夫だよ」
景太:「僕も手伝いますから。姉さんをお願いします」
寿里弥:「分かった。ちょっと行ってくる」
【寿里弥、紅葉の元に向かう】
景太:「すみません」
美桜:「本当に気にしないで下さい。もう少しで準備も終わりますし」
景太:「あの、藤宮さんは…」
美桜:「美桜でいいですよ?」
景太:「え?」
美桜:「藤宮って言いづらくないですか?」
景太:「まぁ…」
美桜:「昔からよく言われるんですよね。それに、名字で呼ばれるの、なんか距離を感じて嫌なんです。だから、美桜って呼んでください」
景太:「じゃあ…美桜、さんで」
美桜:「はい(微笑む)」
景太:「僕のことも、景太でいいですよ」
美桜:「え?」
景太:「あ、えっと、姉さんも居ますし」
美桜:「あ、そうですよね。じゃあ、紅葉さんと景太さんって呼びますね」
景太:「(微笑んで)はい」
【場面転換】
紅葉:「少しは、お話出来ているといいんだけど」
寿里弥:「俺をわざわざ呼んだのは、2人にするためか?」
紅葉:「そうよ。美桜さんと少しでも仲良くなってほしいじゃない」
寿里弥:「本当に弟想いだよな」
紅葉:「言ったでしょ?気持ちが分かるから、って」
寿里弥:「そうだった」
紅葉:「待つのは、私たちのわがままみたいなものだけど…
紅葉: やっぱり、出会えたのならそれは運命だと思うから。手放したくないじゃない」
寿里弥:「…そうだな」
【寿里弥、紅葉を抱きしめる】
紅葉:「寿里弥?」
寿里弥:「俺は昔のこと、全然覚えてないけど。紅葉に出会えて、すごく嬉しいって思ってる」
紅葉:「え?」
寿里弥:「だから、そんな申し訳なさそうな顔するなよ」
紅葉:「寿里弥…」
寿里弥:「理由なんて分からないけど…」
寿里弥:「いつだって、紅葉のことが大切で、好きだって、自信持って言えるぞ。俺は」
紅葉:「そうね…私も、いつだってあなたのことが大切で、“大”好きよ」
寿里弥:「(微笑む)」
紅葉:周りからしたら、昔に縛られているように見えるかもしれない。
紅葉:だけど、あの頃の…紅羽(くれは)の時の気持ちが記憶と共に残っているからこそ
紅葉:あの時には叶わなかった『みんなで一緒に居る』という願いを叶えたい。
寿里弥:俺に当時の記憶があれば、もっと寄り添えるのかもしれない。
寿里弥:でも、それは出来ないから…今、出来ることを。
【場面転換】
美桜:「あ、さっき何か聞こうとしてましたよね?」
景太:「あぁ…美桜さんは妖が視えるって聞いて」
美桜:「・・・」
景太:「すみません、聞いてはいけないことでしたか?」
美桜:「いえ…そういうわけでは…あっ!」
景太:答えようとしていた美桜さんが、突然こちらに飛び込んできた。
景太:あの時と同じように。
景太:だけど、あの時と違うのは…
美桜:無意識に身体が動いていた…
美桜:景太さんのことを守らなくては、と思ったから。
美桜:だけど、気付いたら景太さんに抱きしめられていた。
景太:「結(けつ)!美桜さん、目を瞑っていてください」
美桜:「え?」
景太:「あなたの目には、負担が凄いと思うから」
美桜:「っ!」
景太:「大丈夫。今度こそ、絶対に守りますから」
美桜:「…今度こそ?(小声)」
景太:美桜さんが動いていなければ、気付かなかった。
景太:認識した時には、目の前に迫っていて
景太:咄嗟に結界を張った。
美桜:寿里弥にも話したことがないのに、この人は知っている。
美桜:私の視えるものの大きさを。
美桜:寿里弥には、妖と遭遇して具合が悪くなる時は、視える相手の力が凄すぎて当てられていると言っていた。
美桜:だけど、本当は相手の本質が視えすぎて、処理が追い付かないだけ。
【紅葉、寿里弥 景太と美桜の所にいる妖の強い気配を感じる】
紅葉:「っ…!この気配!」
寿里弥:「美桜が危ない!!」
紅葉:「待って、寿里弥!」
【駆け出す寿里弥 追いかける紅葉】
景太:「この妖、凄い力だ…このままじゃ」
美桜:「景太さん…(不安そうに)」
景太:「(僕が不安がったらダメだ…でも、どうしたら…)」
寿里弥:「おいバケモノ!二人から離れろ!裂破(れっぱ)!」
【寿里弥の術で妖が距離をとる】
寿里弥:「二人とも、大丈夫か?」
美桜:「うん…大丈夫」
景太:「寿里弥さん!助かりました」
寿里弥:「それはよかっ…痛っ!」
【寿里弥 術の影響で怪我をする】
紅葉:「もう、待ってって言ったのに!」
景太:「姉さん!」
紅葉:「あいつが攻撃を返したり出来たらどうするの?寿里弥の力だと、景太の結界も壊しかねないのよ?!」
寿里弥:「…すまん」
紅葉:「まったくもう…話はあとでゆっくりとさせていただきますからね」
寿里弥:この後、妖は紅葉によって、一瞬で片付けられた。
寿里弥:そして俺は、力の使い方についてたっぷりとお説教を受けることになった。
景太:「美桜さん、大丈夫ですか?」
美桜:「はい。ありがとうございました」
景太:「僕は何もしてませんよ」
美桜:「守ってくれたじゃないですか」
景太:「・・・」
美桜:「あの…」
景太:「はい?」
美桜:「どうして、分かったんですか?」
景太:「え?」
美桜:「私の目には、負担がかかると」
景太:「…僕よりよく視える人、だからです」
美桜:「え?」
景太:「あの時、僕には、あの妖は全然見えていなかったので」
美桜:「っ!」
景太:「でも、捨て身になるようなことは、良くないです」
美桜:「・・・」
景太:「守ろうとしてくれたのは、すごく嬉しいです。でも、心臓が止まる思いでした」
美桜:「…すみません。昔から寿里弥に守ってもらっていたので、その反動というか…」
景太:「反動?」
美桜:「どう説明したらいいのか、分からないんですけど」
景太:「・・・」
美桜:「あなたのことを守りたいと思いました。今日初めて会ったはずなのに、どこか懐かしい感じもする、あなたを」
景太:「そっか…それはきっと、『反動』ではなく『想い』だと思います」
美桜:「想い?」
景太:「はい。姉さんも言ってましたけど、大切なものを守ろうとする気持ちがあるからだと思うので」
美桜:「…そうですね」
景太:「あなたには『視る力』があって、僕には『守る力』がある。どちらも無くてはならないものだと思います」
美桜:「そうですね。あの…」
景太:「はい」
美桜:「また、会ってくれますか?」
景太:「え?」
美桜:「もっと、いろんなお話をしてみたいです」
景太:「…僕もです」
【場面転換】
― 紅葉 寿里弥の手当をしながら ―
紅葉:「寿里弥、あなたの力は昔から強いって言ってるでしょ?その反動で、自身をも傷つけてしまうくらい…」
寿里弥:「悪かったって…美桜のことになると、つい」
紅葉:「可愛い幼馴染を守りたいのは分かるけど」
寿里弥:「…それもあるけど」
紅葉:「けど?」
寿里弥:「前にも言っただろ?『美桜は視えるだけだ』って」
紅葉:「えぇ」
寿里弥:「だから俺は、ずっと美桜を守ろうと決めていた。お前たちに会うまでは」
紅葉:「え?」
寿里弥:「景太が美桜の傍に居てくれるなら、それが一番だと思う。だけど、景太が得意としているのが守りなのも知っているから、夢中で手を出してしまったんだ。紅葉が大切に想っている弟だしな」
紅葉:「寿里弥…ありがと」
寿里弥:「…なんてな。そんなものはただの理由に過ぎない。紅葉、俺はただ、お前の傍に居たいんだ。それが俺の気持ちだ。前世の記憶は俺にはないけれど、今のお前の傍に居たい。お前とこれからを歩んでいきたい」
紅葉:私たちが出会ったのは、運命だと信じたい。
景太:信じたいから、僕たちは追い求める。
寿里弥:俺たちが出会ったのは、必然だ。
美桜:ようやく分かった。出会いを、互いを追い求める理由を。
(おわり)
SpecialThanks: JUN 様、紅山 楓 様、くろろこ 様
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