想いは時を越えて~寿里弥×紅葉~
【詳細】
初の4人台本のペアで書いたお話。
およそ10分ほどになります。
【関連作品】※掲載順、シナリオ早見表にリンク有
『平安~現代』※男2:女2
『寿楽×紅羽』※男1:女1
『寿楽×千景』 ※男2:女0
『千景×紫桜』 ※男1:女1
『紅羽×紫桜』 ※男0:女2
『千景と紫桜の最期』※男2:女2、一部兼役あり
『現代編』※男2:女2
『寿里弥×美桜』※男1:女1
『紅葉×景太』 ※男1:女1
『景太×美桜』 ※男1:女1
【あらすじ】
現代に転生して、 再会した2人の話。
【登場人物】
芦屋寿里弥(あしや じゅりや):男性
寿楽の生まれ変わり、本人はその自覚がない。
『視える』家系のため、幼い頃に一通りの術は教わっている。
土御門紅葉(つちみかど もみじ):女性
紅羽の生まれ変わり。代々陰陽師の家系の土御門家のお嬢様。
前世の記憶を持っているため、寿楽の生まれ変わりを探していた。
寿里弥:久しぶりに近所の神社に行ったときに出会った
寿里弥:土御門 紅葉(つちみかど もみじ)という女性は
寿里弥:別れ際に不思議なことを言った。
紅葉:『じゃあ、寿里弥(じゅりや)さん。また、どこかで』
寿里弥:「どういう意味だ?」
寿里弥:そんなことを考えながら
寿里弥:何となく…いや、もしかしたらまた会えるかもしれないと
寿里弥:数か月ぶりに彼女と出会った神社に向かっていた。
【場面転換】
- 神社 -
寿里弥:「あ…」
紅葉:「あ、また会いましたね。寿里弥さん」
寿里弥:「…覚えていたんですね」
紅葉:「もちろん。私にとっては、とても大切なことですから」
寿里弥:「どうして、俺がここに来ると思ったんですか?」
紅葉:「どうして、そう思うんですか?」
寿里弥:「待っていたような言い方だったんで」
紅葉:「何となく…でしょうか」
寿里弥:「今回は星読みしなかったんですね」
紅葉:「あなたと再会するタイミングは、運命に任せようかと」
寿里弥:「そういうものですか」
紅葉:「そういえば、今は違うって言っていましたけど…
紅葉: どうして辞めてしまったのですか?」
寿里弥:「ん?陰陽師の仕事をってことですか?」
紅葉:「えぇ」
寿里弥:「祖父曰く、陰陽師は仕事にはならないから、らしいです」
紅葉:「まぁ、確かに…儲けるという意味では仕事にはならないかもしれませんね」
寿里弥:「あとは…父が『視えなかった』から、ですかね」
紅葉:「あら、そうなんですか?」
寿里弥:「はい。だから、廃業するしかないってなったって。
寿里弥: とはいえ、俺はその祖父に陰陽師のノウハウを叩き込まれましたけど」
紅葉:「だけど、再開しようとは思わないのですね」
寿里弥:「…土御門って言ってましたよね?」
紅葉:「え?はい」
寿里弥:「ということは、安倍の血筋。
寿里弥: 俺の先祖とはあまり相性よくなかったってことですよね」
紅葉:「先祖は、そうですね。でも、それは当時の話。あくまでも血筋です」
寿里弥:「…なんか、前にもこんな会話を誰かとしたような気がします」
紅葉:「ふふっ。そうですか」
寿里弥:「なんで、笑うんですか?」
紅葉:「今は、秘密です」
寿里弥:「(溜息)まぁ、いいです」
紅葉:今はまだ、話す時ではない。
紅葉:彼が感覚として感じ取っているのなら、いずれ思い出すかもしれないから。
紅葉:だけど、少しだけあの時のようになりたくて…
紅葉:「あの…寿里弥さん」
寿里弥:「はい?」
紅葉:「私たち、もう少し気さくにお話出来ないでしょうか?」
寿里弥:「え?」
紅葉:「私は、あなたともっと仲良くなりたいから」
寿里弥:紅葉の提案を、自分でも驚くほど、すんなり受け入れた。
寿里弥:それはきっと、会ったばかりのはずなのに
寿里弥:なぜか、懐かしい気がしたからだろう。
【場面転換】
紅葉:寿里弥と会っているうちに、自然と昔のことを思い出すようになった。
紅葉:寿里弥の性格は寿楽の時のままで、嬉しくなった。
紅葉:そして、惹かれてしまうのは、やはり運命なのだと思った。
寿里弥:紅葉と会ううちに、惹かれている自分に気付く。
寿里弥:知り合って数年が経ち、その想いを伝えるか悩んでいた。
紅葉:「寿里弥、どうしたの?」
寿里弥:「あ、いや…」
紅葉:「何か心配事?」
寿里弥:「…なぁ、紅葉」
紅葉:「何?」
寿里弥:「お前と俺は、この神社で初めて会ったんだよな?」
紅葉:「えぇ、そうよ。でも、それがどうしたの?」
寿里弥:「ずっと前から知っている気がするんだ」
紅葉:「・・・」
寿里弥:「そんなわけないって分かっているんだ。住む世界が違うわけだし」
紅葉:「住む世界?」
寿里弥:「あぁ。だって、土御門って言ったら
寿里弥: この世の中に知らない人はいないって程の大企業だろ?
寿里弥: そんな家柄のお嬢様と俺が、どこかで出会うなんて、ありえないし」
紅葉:「…ねぇ、寿里弥」
寿里弥:「ん?」
紅葉:「前にも、覚えがない話を誰かとした気がするって言っていたわよね?」
寿里弥:「あぁ」
紅葉:「それはきっと、あなたの前世よ」
寿里弥:「え?」
紅葉:「あの時は、知り合ったばかりで言うことではないと思って
紅葉: 言わなかったのだけど、私とあなたは前世でも出会っているの」
寿里弥:「前世?」
紅葉:「そう。私は藤原の遠縁のお姫様。あなたは腕の良い陰陽師だった」
寿里弥:「・・・」
紅葉:「私は視えるだけで、何もできない自分が嫌で、術を習うようになったの」
寿里弥:「それ…いつの時代?」
紅葉:「平安」
寿里弥:「それじゃあ、女性が術を使うなんて」
紅葉:「えぇ、ご法度だったわね」
寿里弥:「よく出来たな…というか、よく知り合えたな」
紅葉:「言ったでしょ?腕の良い陰陽師だったって」
寿里弥:「でも、芦屋の家系は…」
紅葉:「あの時はあなたは違う家系だった。
紅葉: それに、家系は関係なく腕の良い者が上に上がっていた」
寿里弥:「そうなのか」
紅葉:「私もすべてを覚えているわけではないけど…
紅葉: あなたと話していると自然と懐かしさと一緒に思い出しているの」
寿里弥:「…そうか」
紅葉:「だからって(わけではないけど)」
寿里弥:「(さえぎって)紅葉」
紅葉:「え?」
寿里弥:「ちょっとズルく聞こえるかもしれないけど…」
紅葉:「ん?」
寿里弥:「俺はお前が好きだ」
紅葉:「あ…」
寿里弥:「ずっと、身分の違いとか色々考えてて、言えなかったけど」
紅葉:「ふふっ」
寿里弥:「紅葉?」
紅葉:「ごめんなさい。昔も、そんな風に言われたなぁと思って」
寿里弥:「え?」
紅葉:「さっきも話したけど、当時も身分違いだったの。
紅葉: だから、あなたは相応しくなるまで待っていてって」
寿里弥:「そうなのか(気恥ずかしそうに)」
紅葉:「でもそれは、昔のこと。今は身分など気にする必要はないわ」
寿里弥:「いや、それは…」
紅葉:「だって、土御門の当主は、私ですもの」
寿里弥:「え?!」
紅葉:「ふふっ」
寿里弥:こうして、俺たちは晴れて恋人同士になった。
寿里弥:紅葉と一緒に居ると、懐かしさで色々不思議な気持ちにもなるけど
寿里弥:何よりも落ち着く。
寿里弥:ただ、お嬢様なのには変わらないからこそ、新鮮なこともある。
紅葉:ようやく、念願が叶ったような気がした。
紅葉:寿里弥と寿楽は似ている所が多い。
紅葉:だから、生まれ変わりだと確信を持てるわけだけど。
【場面転換】
- 公園 -
紅葉:「寿里弥、お待たせ!」
寿里弥:「そんなに慌てなくても、弁当は逃げないぞ?」
紅葉:「だって、あの子たちが全部食べてしまうかもしれないじゃない」
寿里弥:「大丈夫だよ。おまえの分は別にしてある」
紅葉:「え?」
寿里弥:「そもそも、お前がここを教えなければ、そんなことしなくて済んだんだけどな」
紅葉:「…だって、嬉しかったから」
寿里弥:「景太に話すなら分かるけど、なんで妖に話すんだよ(苦笑)」
紅葉:「景太は、今想い人を探している所だから。
紅葉: 見せつけるようなことをしてはいけないと思って」
寿里弥:「ふ~ん」
紅葉:「何よ」
寿里弥:「いや、弟想いだと思ってな」
紅葉:「見つかるまでのモヤモヤは、よく理解しているもの」
寿里弥:「それもそうか…ほら、弁当」
紅葉:「ありがとう…うわぁ」
寿里弥:「ん?どうした?」
紅葉:「色とりどりで綺麗だし、美味しそう!」
寿里弥:「味は保証するよ。今朝、幼馴染に味見してもらったから」
紅葉:「幼馴染?」
寿里弥:「あぁ。隣に住んでて、今朝おすそ分けって家に色々持ってきてくれてさ。
寿里弥: その時についでに味見をしてもらった」
紅葉:「その子、女の子?」
寿里弥:「え?あぁ。でも、ただの幼馴染だぞ…あ」
紅葉:「ん?」
寿里弥:「あいつ、景太と同い年だったかも」
紅葉:「え?」
寿里弥:「しかも、視える。視えるだけだけど」
紅葉:「ねぇ、その子の名前は?」
寿里弥:「藤宮美桜(ふじみや みお)」
紅葉:「ねぇ、寿里弥。その子を私たちに紹介してくれないかしら?」
寿里弥:「ん?分かった。帰ったら話しておく」
紅葉:「ありがとう。じゃあ、いただきます」
寿里弥:「お嬢様の口に合うといいけどな」
紅葉:「もう!お嬢様って言わないでって言ってるでしょ?」
寿里弥:「(笑いながら)悪い悪い」
【紅葉、お弁当を一口食べる】
紅葉:「(少し拗ねた感じで)まぁ、美味しいから許してあげる」
寿里弥:「それはどうも(微笑み)」
紅葉:まさか、こんな近くに居るなんて。
紅葉:多分、彼女も記憶はないのだろうけど
紅葉:きっと、景太なら大丈夫。
紅葉:これもきっと、運命の巡り合わせ。
寿里弥:紅葉の笑顔が見られるだけで
寿里弥:作ってよかったと思った。
寿里弥:まさか、景太の探している想い人が幼馴染で
寿里弥:のちに付き合うことになるとは、この時は思っていなかったけど。
寿里弥:でも『今度こそ』4人で一緒に楽しく過ごせたらいいなぁと
寿里弥:何となく思った。
(終わり)
SpecialThanks:JUN様、紅山楓様
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2023.09.10 05:25